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『スポーツ随想』第6回(最終回)










お国柄と危機管理 ――― リュウ・タカハシ

山陽新聞 夕刊 2002年 3月11日(月)号


 「沈没にひんしたタイタニックの乗務員は、女性と子供を優先して救命艇に乗せるため、男性客を極寒の海に飛び込ませようとした。そこで英国人には『あなたは紳士ですね』、米国人には『大丈夫、保険がかかってますから』、イタリア人には『飛び込むのは違法です』とささやき、喜んで飛び込ませることに成功。日本人には『皆さん飛び込んでらっしゃいますよ』がテキメンだった」
 映画「タイタニック」が話題になっていた時に、英語圏を駆け抜けた秀逸なジョークだ。仕事で各国の人に接しているが、ステレオタイプを抜きにしても、確かにこういう傾向があることは、認めざるをえない。
 しかし、オチにされてしまっている日本人の性格は、狭い国土に1億人以上が平和に暮らすため、長年かけて磨き上げてきた、誇るべきハーモニー精神なのだ。笑いのネタにするとは、なんて失礼な!
 とはいえ、この美しい性格も、こと危機管理に関しては、裏目に出ることも少なくない。例えば、私がシーカヤックの説明をしているときの、日本人特有の行動に「説明を聞かずに、他の参加者のまねをする」というものがある。情報を処理して自分で判断するのが苦手なのだ。「間違いを恐れる」という傾向が拍車をかけるものだから、命がかかる情報でも、質問して理解しようとするより、とりあえずまねしようとしてしまう。まさに「裏目」である。
 その点「分からない」と素直に質問できる欧米人は、やはり危機管理面では一歩先を行っているな、と感心させられる。
 余談だが、先のジョークに私が追加して好評だったのが「ニュージーランド(NZ)人には、足首にゴムひもを巻きつけ、『3、2、1』とカウントダウンする」というもの。ご存じバンジージャンプは、私の住む国、NZ発祥の人気アクティビティなのだ。

(シーカヤック・ガイド)

 











書斎での独白 ――― Ryu H. Takahashi


● 欠番

 この『書斎』のページでは、トップページでお断りした通り、山陽新聞夕刊掲載分を転載させて頂いており、タイトルや掲載日も同紙のものである。 そして、今回が第6回、最終回分である。
「あれ?2月分の第5回はどうなった?」
 実はオリンピック報道のおかげで、山陽新聞夕刊では私の第5回分を掲載するスペースがなかったようなのだ。
 というわけで、とりあえず現段階では、第5回は「欠番」とさせていただき、後日他紙掲載分が手に入った際に、それを掲載することにする。
 ちなみにちょっとだけネタをばらしておくと、第5回のテーマは、「NZのアウトドアショップについて」である。



● タイトル

 ついに、私がつけておいた原題と一字一句違わぬタイトルが採用された! 偶然なのだろうが、やっぱり嬉しい。

   原題
     『お国柄と危機管理』

 《追記 (2002年12月19日)》

 いくつか掲載紙を入手したので、ご紹介しよう。

 『危機管理に疎い日本人』 (河北新聞 夕刊  3月16日号)
 『お国柄と危機管理』 (熊本日日新聞 夕刊  3月11日号)
 『お国柄と危機管理』 (北日本新聞 夕刊  3月15日号)
 『危機管理と日本人 自己判断せず、裏目に』 (南日本新聞 夕刊  3月14日号)


 ガハハハ、やったね。山陽新聞社以外にも2社が原題と同じタイトルを採用して下さっていた。 と、下らぬことで喜んでみたりする・・・。



● トピック

 今回のトピックも、第4回同様、拙サイト読者諸兄にはお馴染みのテーマ。 実は、この連載が決まった段階で、すでに「最終回は危機管理ネタ」と決めていた。 掲載時期が3月、つまりアウトドア・シーズン開幕直前となるわけだし、自分のライフワークテーマを別媒体に掲載するまたとないチャンスだし。
 第4回分以降、字数制限にスッカリ慣れてしまい、ラフな下書きのつもりでバシッと字数以内に収まってしまうという、自分自身でも驚くような芸当が出来ていたので、今回の原稿執筆時も、字数に関してはうまくまとめる自信があった。
 ただ、いかに「軽い読み物」に仕上げるかには、相当頭をひねった。 映画『タイタニック』をネタにした上記のジョークを思い出すまでには、相当頭の中で色々な構成を作っては壊したものだった。
 あのジョークを思い出した後は、ほんの2時間ほどで書きあがってしまった。 構成的にも、ジョークで始め、本論の危機管理に繋げ、最後はまたジョーク、しかもNZに繋げて終えるという、割合とキレイにまとめることが出来たと、自分自身では満足している。

 ただ、1つ残念だったことも、あるにはある。 季節時候に関することが入っておらず、タイタニックを連想するには掲載時期が暖かすぎたことだ。 まぁ、本音をいえば、季節時候を入れる際も、「日本の季節」を入れるべきか、「NZの季節」を入れるべきかがいつも悩みの種で、あえて入れていない回も少なくない。 だから、今回も「入れられなかったふり」をして、実は深層心理的には「わざと」入れなかったのかもしれないのだが・・・。
 まぁ、この辺は、次回また何かにエッセイを連載させていただくことがあれば、その時のテーマにしておくことにしよう。



● 本名、偽名

 第1回の『ペンネーム』と題する項で、次のように書いた。

 だから、今のところ、文を書くときは『リュウ・タカハシ』、パドルを握るときは『Ryu』という風に、自分の中で名前が分裂してしまったような奇妙な感覚を覚えている。この変な感覚が、今後自分の中でどのように育っていくのか、それとも収束していくのか、非常に楽しみにしている。

 この文を書いていた頃、私は野遊び屋の立ち上げに関わっていた。 その時点では、まさか『リュウ・タカハシ』の名前で、日本でガイドデビューする羽目になるとは、思ってもいなかったのだ。 まだ実際に日本でガイドデビューしたわけではないのだが、立ち上げ作業の中で毎日のように野遊び屋サイトを覗き、『ガイド リュウ・タカハシ』の文字を眼にしつづけたおかげで、ついにパドルを握る時にも『リュウ・タカハシ』という意識が育ってきてしまった。
 それが自然かと問われれば、やっぱり何か変だ・・・。 本名はどちらだ?と問われれば、やっぱり『Ryu』なのである。 つまり、『ペンネーム=リュウ・タカハシ』、『本名=Ryu』という意識であり、『文を書くときはペンネーム』、『パドルを握る時は本名』という感じで仕事をしていたのである。 それが、『パドルを握る時もペンネーム(偽名)』というような感じになってしまったのだ、自分的には。
 う〜ん、パドリングしているときにペンネームを使うなんて、やっぱり何か変だ・・・。
 というわけで、結果をご報告すれば、現在のところ、
「変な感覚が、ますます育ってしまっている」
という状況のようだ。
 ま、いいか、どうせ自分は所詮『ガイジンガイド』なんだし、NZでガイドしているときは相変わらず『本名』で仕事できるのだから・・・。



● 最後に感謝

 こうした機会を頂き、本当にありがとうございました>共同通信社スポーツ特信部様

 ご愛読およびご指導ご鞭撻、本当に感謝いたします>読者諸兄

 大変勉強になりました。 今後に活かしていきたいと思います。








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