banner.jpg HOMEアウトドアプロガイド論その5 続々・ガイドとインストラクター



アウトドア

プロガイド論


その5 続々・ガイドとインストラクター







 前項その4 コラム集『続・ガイドとインストラクター』で、その3 ガイドとインストラクターの文章を反省し、あらためて「決してインストラクターをガイドより下に見ているわけではない」ということを述べた。
 しかしながら、現在の日本のシーカヤック界が必要としているのは、やはり「ガイド」だとの思い自体は、今も変わっているわけではない。 もちろん、業種の優劣云々の話ではない。 あくまでも、「需要と供給のバランス」の問題だ。 この点についても、あらためて今の言葉で再述してみたいと思う。

 NZの商業シーカヤックはきちんと産業として成立しており、専業で食っているプロがごろごろいるのは周知の事実。 また、日本でもラフティング業界は、大きなマーケットが成立している。 両者の共通点は何か?
 そう、現場で仕事をしているプロの大多数を占めているのが、インストラクターではなく、ガイドである、ということだ。

 仮に日本のラフティング業界に、ラダーマン養成インストラクターがひしめいていたとしよう。 彼らは「食える」だろうか?
 答えはもちろん、Noだ。 ガイドの需要は多いが、インストラクターの需要はそれとは比較にもならないほど微々たるもののはず。

 では、私のホーム・グラウンド、エイベル・タズマン国立公園ではどうか? ここは、15社のガイドツアー会社(2002年1月現在)がひしめく商業シーカヤッキング・フィールド。 NZはおろか、世界中探しても、これだけ多くの「食えているプロ」を抱えるエリアは、おそらく他に類をみないだろうと思う(もしあったら、ぜひともご教授ください m(__)m )。
 他社を出し抜く新商品開発に各社が血眼になっている超激戦区だが、ここに面白い事実がある。 15社中スクール部門を併設している会社は、皆無なのだ。 これが何を意味するか、わざわざ申しあげる必要はないだろう。
 ちなみに蛇足ながら申しあげれば、このエリアで「スクール」を運営しているのは、『ネルソン・カヌー・クラブ』というアマチュア・クラブである。 これで必要十分であり、プロが手を出すには、あまりにも割の合わない仕事、というわけだ。

 日本の商業シーカヤック界は、これら2つの例とはまったく事情が違うのだろうか?
 私はそうは思わない。 マーケットのニーズ自体は、日本シーカヤック界も日本ラフティング界もNZシーカヤック界も、基本的には同じだと思うのだ。 同じだからこそ、「インストラクター過剰供給、ガイド品薄」の日本シーカヤック界が「食えない」のではないだろうか?

 つまり、こういうことだ。極論すれば、インストラクターというのは「お金を払ってでも技術を習得したい」という人だけを相手にする職業である。 そういう人は、人口の一握りにすぎない。 特にシーカヤックを本格的に習得したがる人なんて、ほんのほんの一つまみにすぎないだろう。
 それに対して、「シーカヤックとやらを、ちょっとだけ体験してみたいな」という人は、習いたい人の何十倍、何百倍、いやひょっとすると何千倍もいるのだ。 このニーズにこたえるのは、もちろんガイドの仕事だ。 つまり、ガイドの需要は、インストラクター需要の何十倍、何百倍、あるいは何千倍かもしれない、ということなのである。

 もちろん、インストラクターがガイドの真似をして「体験ツアー」をやることは、不可能ではないとは思う(今の日本は、このパターンが圧倒的だろう)。
 しかしながら、以前にご説明した通り、ガイディング技術の中にインストラクション技術が含まれるのに対して、インストラクション技術の中にガイディング技術が含まれるわけではない、という厳然たる事実がある。 つまり、ガイドがインストラクターの真似をするのは比較的カッコがつきやすいが、その逆はなかなか難しいだろう、というわけだ。 音楽に例えるならば、ベーシストがギタリストの真似をするよりも、ギタリストがベーシストの真似をする方が、はるかにサマになりやすい、というのに似ているかもしれない。つまり、一般論でいえば、ギタリストやガイドの方が「潰しがききやすい」と思うのだ。
 重ねて述べるが、不可能とは決していわない。 あくまでも「潰しがききにくい」という表現にとどめる。 無難にこなしてしまう方も、いらっしゃるだろうとは思う。
 だが、しかし・・・。

 結局私自身が「ガイド」にこだわり、そして日本の商業シーカヤック界に必要なのも「ガイド」であると力説しているのも、こういう理由があるからなのだ。 しつこくいうが、決してインストラクターという職業を軽んじているわけではない。 その役割には敬意を表するし、レベルを引き上げる役目の必要性も十分に理解している。業種によってはインストラクターの需要の方がはるかに大きい場合も少なくないだろう。
 しかしながら、現段階のシーカヤック産業に限れば、「インストラクターのニーズの小ささ」という事実だけは、いかんともしがたい。 しかも、シーカヤック・インストラクターは「潰し」がききにくい。
 だから、私としてはニーズが大きく、「潰し」もききやすいガイドの方をおすすめするしかないのである。 その1 はじめにの中で
「う〜ん、それじゃぁ食えなくても仕方ないなぁ」と思う
と綴ったが、多くの理由の中の大きなものの一つが、実はこれだったのである。

 というわけで、私自身はこれからもガイドにこだわり、日本にガイドを増やすよう努力していくつもりだ。

 ただ、実のところを申しあげれば、私自身は自分自身のさらなるレベルアップのために、今本格的にインストラクター修行をしているところだ。 ガイド業務に必要な最低限レベルのインストラクション技術にあぐらをかくことなく、世界中どこに行ってもプロ・インストラクターとしても通用するだけの、もっともっと高度なインストラクション技術を習得しようとしているのだ。
 もちろん、上述の通り専業インストラクターとして食っていくのは極めて難しいのは重々承知しているので、そっちに転向する気があるわけではない。 インストラクターとしても超一流という自信をつけられれば、ガイドとしてもう一段高みにステップアップできるだろう、というのがその理由だ。 また、ガイド養成ワークショップを開催するにあたっても、ガイド志望のカヤッカーに通用するインストラクション技術が必要になるし、上記のようにたまに請われてインストラクターに早変わりするときにも、真似事レベルの仕事ではなくて、自信を持って高品質な仕事を提供できるように、という理由もある。

 ともあれ、今後の日本のシーカヤックを拡大するためには、やはり上質なガイドを多く供給することが必要だと、今もなお固く信じている。
 ま、何事にも例外というものはつきものなので、バンバン食えてしまうスクールやインストラクターが存在しても、別に驚きはしないが・・・。






(その4へ)
HOMEアウトドアプロガイド論 その5 続々・ガイドとインストラクター
(その6へ)



Copyright©2000-2002 Ryu H. Takahashi All Rights Reserved.
paddle@onjix.com