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その8 BE-PAL編集部からの返信







 『その6 雑誌に見る悪い例』で、小学館発行『BE-PAL』誌の危機管理不足を取り上げた。 文末に書き添えた通り、批判記事掲載の旨は編集部の方にもお知らせしておいたのだが、約2週間後の7月14日に返信を頂いた。 アウトドア・マスコミの危機管理に対する本音、意識レベルが伺える貴重な資料である。 私個人のメーラーの過去ログの山に埋もれさせるのは社会的損失であると考え、ここに掲載したい旨のお願いをしておいたのだが、 このたび無事お許しを頂けたので、ようやく晴れて公開できる運びとなった。
 改行の位置に至るまで、一切手を加えず、原文のままに全文を掲載する。
 そしてその後、例によって私の意見を述べてみよう。





まず最初にいつもビーパルをご愛読いただきありがとうございます。
またたくさんのメールを読者の方々からいただく関係で、 ご返事が遅れたことをお詫びいたします。
このたびのビーパル6月号特集「ぶらぶらツーリングカヌー入門講座−野田知佑はこ んな 気持ちいいコトしてきた」の内容に関し、貴重なご意見をいただきありがとうござい ました。
RYUさんのホームページを拝見しましたが、内容の大変な充実ぶりに驚かされまし た。
1冊のムックに匹敵するボリュームとクオリティだと感心しました。プロの編集者と しては 出版の素人の方にこういう仕事をされると我々の作る本が売れなくなって本当に困り ます。
(笑い)

RYUさんのご指摘の要旨は
1.特集全体の構成の中に「カヌーを楽しむ上での危機管理」の視点が欠落している。

2.p30,p31の「エスキモーロールさえなければ」の内容が、コメントを寄せていた だい た野田知佑氏の意に反した方向へ意図的に使われている。また取材に協力した「みた けカ ヌー教室」の内容が「ロール不要」記事中に紹介されていて、気の毒である。また、 転覆 隊隊長のコメントの使い方も悪意が感じられる。

3.影響力の大きいビーパルはカヌーのような生命の危険のある遊びを提案する場合 はも っと綿密な記事作りが必要なのではないか。

というように理解しましたがよろしいでしょうか。

まず、1.と3.に関しては、確かにご指摘の通りかもしれません。ただ「初心者に新 しい 遊びを提案する場合、できるだけハードルを低くして気軽に楽しく始められるように 誘導 したい」というのは20年前のビーパル創刊以来の編集部の方針です。RYUさんにも その 点はご理解いただけているものと考えています。アウトドアの遊びは程度の差こそあ れど こかに「1%の命がけ」の部分があります。それが楽しさの源でもあるのですから、 その 「命がけの部分」を自覚して各自が自己責任で楽しむというのがアウトドアで遊ぶ者 の暗 黙の了解事項だと思います。これはわれわれマスコミの責任逃れではなく一般的な前 提と してそう考えるということです。
で、次に初心者に対してそういったルールも含めて啓蒙していくのが我々の責任とい うこ とになります。
その視点で考えたときに6月号のビーパルの記事が的確であったかどうかということ だと 思います。われわれは編集作業の時点で「これでよし」として読者のお手元に届けた わけ ですが、前述のようにRYUさんのように考える方もいるということに気がいたらない 部分 がありました。率直に反省したいと思います。

2.に関してはRYUさんご指摘のような意図は全くなかったとお答えします。野田知 佑氏 とも最近お会いしましたが「面白くできていた」とおっしゃっていましたし、小田さ んの 方からのクレームも転覆隊からのご指摘も今のところいただいておりません。
またRYUさんの「エスキモーロールは不要ではなく必須技術である」という点に関し ては、 正直言って野田さん、転覆隊隊長の考え方とRYUさんの間に多少ニュアンスの相違が あ るような気がします。ただRYUさんのおっしゃっていることは基本的には誰も反対し ない 正論だと思いますし、編集部もそれに反対しているわけではありません。もしそうで ない ように読まれたとしたら、それは我々の編集技術あるいは文章力が未熟だったという こと で、素直に反省させていただきます。

今回のRYUさんのご意見、ご指摘はビーパル30万読者にとっても大変に有益なもの だと 考えますので、反省もこめましてビーパルのHP(ibep@l)上で全文を掲載させて いた だき、RYUさんのHPにも飛べるようにしたいと考えていますがいかがでしょうか。 それ がRYUさんのご指摘に応える最良の方法かと考えます。同時にほかのビーパル読者も 含め て今回の問題を一緒に考えていく機会にもなるかと思います。ご返事をお待ちしてい ます。

ビーパル編集長 黒笹慈幾






 以上が全文だ。 ここからは私の意見を綴っていくわけだが、それを読む前に、読者諸兄には今一度このご意見に目を通した上で、あなたご自身のご意見をまずまとめてみて頂きたいと思う。 『その6 雑誌に見る悪い例』では、特集ページの中からごく1部だけを抜粋だけに過ぎないから、同誌2000年6月号をご覧になっていらっしゃらない方には少々感想を持ちづらい点があるかもしれないだろうから、ヒントを1つ差し上げよう。
 『その6 雑誌に見る悪い例』の最後に、BE-PAL誌編集部からのご意見を期待する旨を記した。 実は私が1番興味を持っていたのは
「この危機管理情報ゼロの紙面は、紙面の雰囲気重視(つまり売上重視)のために敢えて危機管理情報を無視して作られたものなのだろうか? それとも編集部自身に危機管理能力が欠如していたために、なるべくしてこのような紙面になってしまったのだろうか?」
という点である。 特にこの点について、皆さんの見解を1度まとめてみて下さい。 この『危機管理考』を今までお読みいただいていた方には、このご意見を読むだけでもその判断は可能なはずだ。
「BE-PAL誌は危機管理能力はあるが商業的な見地から敢えて掲載しなかったのか?それとも危機管理能力が欠如しているのか?」

 さてさて、皆さんのご意見がまとまったところで、私の意見を綴ってみよう。 疑問は、今回のこのコメントを拝読して氷解した。

 いきなりだが、結論から申し上げよう。 答えは後者、つまりBE-PAL誌編集部自体の危機管理能力は極めて低いのである。 そして、そのために紙面の雰囲気を重視して危機管理情報をおろそかにする傾向もあるということだ。 決して、危機管理能力がありながら非人道的拝金主義的な見地から危機管理情報を削って売上重視の紙面を作っていらっしゃるわけではないようだ。
 まぁどちらがいいのかといわれても、どちらも困りモノには違いないのだが・・・。

 順にみていくことにしよう。 まず先方の作法に習ってこちらでもこのご意見の主旨をまとめると

  • 1.および3.が私が問題とする危機管理に関する問題
  • 2.が、紙面作りの表現上の問題
となるだろう。

 おそらく雑誌編集部としては1.および3.のような『内容的』な批判もさることながら、2.のような紙面作りの表面上の『表現的』な部分に関する批判にも敏感にならざるをえないのだろう。 しかし私の立場から正直に申し上げれば、2.はどうでもいい。
 確かに『その6 雑誌に見る悪い例』では野田知佑氏や転覆隊隊長本田氏のコメントの扱いも批判したが、それこそ議論のテクニックとして便宜的に取り上げただけのことであり、 紙面作りや表現自体を批判するのが私の目的ではない。 つまりBE-PAL誌にしてみれば上記のように別カテゴリーの問題だろうが、私にしてみれば両方とも一貫して危機管理に関する話であり、同誌の危機管理情報が欠如した特集記事の内容、及び、編集部の危機管理意識欠如の姿勢自体を批判しているだけだ。 1.および3.が一般論・概論、2.が具体論・各論である。 具体論・各論の展開の仕方など無数にあるが、今回はたまたま2.のような方法をとったというだけの話だ。
 ここでBE-PAL誌の土俵に乗って表現上の問題にまで論を及ばせると、完全に論旨から逸脱するので、先方には申し訳無いのだがここでは2.に関するコメントは一切控えることとし、本題の『危機管理』に関する1.および3.の部分にのみ焦点を絞ってみたい。

 さて、BE-PAL誌のご意見のうち、危機管理に関する部分をさらに要約すると、次のようになるだろう。

  1. 「6月号の特集中に危機管理情報が欠落していた。同誌のような影響力の大きな媒体の場合はその点にも責任が必要」というRyuの主張はもっともである
  2. ただ、「できるだけハードルを低くして気軽に楽しく始められるように 、初心者にアウトドアを紹介する」のが本誌の基本方針である
  3. アウトドアにリスクは付き物であり、それを自覚して各自が自己責任で楽しむのが暗黙の了解事項である
  4. 初心者にその点を啓蒙するのが本誌の役目である
  5. 6月号の紙面ではその点については「これでよし」と判断した
  6. しかしRyuのような受け取り方をする読者の事に気がいたらなかった部分があり、それに関しては素直に反省する

 まず全体をざっとみて、BE-PAL誌の主張をもう1度把握しておこう。
 5.6.を読むと、
「編集部には危機管理能力はあり、紙面にもそれは盛り込んだつもりだが、そうと受け取ってもらえなかったのは筆力の至らなかったせいであり、その点は反省している」
という主張が見える。 そして2.
「危機管理を前面に押し出せないのは初心者向けの敷居の低い雰囲気の紙面作りが基本方針だからであって、仕方ない」
と、それを補足する形になっている。
 つまり分かりやすく書きなおせば
「危機管理情報の重要性は分かってるし書こうと思えば書けるが、紙面の雰囲気を慮ってあの形でOKを出した。 Ryuのような厳しい見方をする読者のことが念頭に無かったのは失敗だから、次はもう少し気をつけたい」
ってな感じだろうか。 なるほど・・・。

 ワハハハ、バカを言ってはいけない!残念ながらプロの目は誤魔化せないのだ!
 失礼、先ほど風呂の中で京極夏彦氏の小説を読んでいたもので、榎木津礼二郎が憑依してしまった・・・(^_^;
 BE-PAL誌ご自身は危機管理能力をお持ちのつもりだろうが、私に言わせれば、これは
「事故のニュースを見て危機管理だの管理責任だのに関してあぁだこぅだイッパシの意見をブツが、実際には命を賭けて危機管理判断を1度もした事のない、危機管理能力欠如者の意見の典型的な例」
に他ならないのだ。 メディアの責任は把握していらっしゃるようだが、その責任を果たすだけの危機管理能力は、残念ながら身につけていらっしゃらないと断言せざるを得ない。

 詳しく順に解説しよう。
 まず1.はいいだろう。 危機管理の重要性や、それをマスコミは説く責任があるなんてことは、BE-PAL誌が認めようと認めまいと、当たり前のことだ。 まぁ、もちろん否定されると話の道筋も違ってくるわけだから、認めて頂いて助かってはいるのだが・・・(^_^;

 次に2.、ここにポイントがある。 冒頭の『ただ』という言葉だ。 1.で述べたことを翻そうとする接続詞である。 つまりBE-PAL誌は
「危機管理情報と初心者に優しい紙面作りは矛盾する。 だから後者を優先する」
と言っているのである。
 論外だ。 『その6 雑誌に見る悪い例』の中で、この『危機管理』と『敷居の低い紙面作り』の折り合いについてもきちんと述べているのだが、この点については全くご理解頂けなかったようである。
 再度いう。
 BE-PAL誌の長い歴史に基づくノウハウをもってすれば、初心者向けの敷居の低い紙面作りの中に危機管理情報を盛り込むことは可能なはずだし、もし不可能な場合は人命に関わる危機管理情報のほうを優先すべきである。 人命を犠牲にしてまで敷居を低くし、何の危機感も持たない人間をアウトドアにどんどん送り出すなど、言語道断である。 これはゆるやかな殺人とさえいえるものである。

 3.に関しては、この『危機管理考』をきちんとお読み頂いている読者諸兄にはご説明の必要は無いだろうが、BE-PAL誌の現状認識は完全に誤っている。 (つまり、この『危機管理考』をきちんと最初からお読みになっていないことも明白なのである。 それで意見を述べようというのが、果して出版のプロといえるのだろうか?) 暗黙の了解じゃないから、私が苦労してこんなページを展開しているのである。 日本人一般の危機管理能力の低さを知らないが故の発言であることは明白。 読者の危機管理レベルを知らなくして、危機管理情報を適切に提供出来るだろうか?

 

 残念ながら、再三書いている通り、大多数の日本人の危機管理能力は限りなくゼロに近いのである。
 これも再三書いたことだが、当のBE-PAL誌に理解頂けていらっしゃらないようなので、BE-PAL誌編集部のためにあえて再述する。 私がご案内するお客様の大半はアウトドア初心者、入門者である。 つまりまさにBE-PAL誌の想定している読者層と完全に重なるのである。 彼らを見ていると、驚くほど危機管理意識が不足している事は『その1 身近な例から』『その4 身近な例をさらに』などでとりあげた通りだから再述は控えるが、 これが現場をよぉ〜〜〜〜く知っているプロの目からみた事実なのである。 つまりBE-PAL誌のいうその「命がけの部分」を自覚して各自が自己責任で楽しむというのがアウトドアで遊ぶ者の暗黙の了解事項なるものは、少なくともBE-PAL誌が主要ターゲットとして捉えている読者層には全く期待出来ないという事である。

 これがもっと専門的な雑誌、例えばロッククライミング専門誌、カヌー&カヤック専門誌、ヨット専門誌などのご意見ならばある程度頷ける。 想定している読者層のレベルがより高くなるわけだから、読者の危機管理レベルも弱冠高めに期待していてもおかしくはないし、そうしないと紙面作りが出来ない部分もあるだろう。

 しかし、私が知る限りBE-PAL誌は特に初心者向けの敷居の低い紙面作りを心掛けていらっしゃる雑誌のはずだ。 マスコミの責任逃れではなく一般的な前提と書いていらっしゃるが、この現状を踏まえると残念ながらこれにも頷くわけにはいかない。 もし本当に『一般的な前提』ならば、何も私のような一介の駆け出しカヤッカーが完全にボランティアで、仕事の合間を縫って、大変な思いをしつつ『危機管理考』を展開する必要はないのである。 そうじゃないからこんなページが生まれたのだ。

 実際BE-PAL誌としては責任逃れをされているつもりは毛頭ないであろうことは理解出来る。 おそらく本当にそのように認識されていらっしゃるのだろう。 しかし残念ながら、その認識は極めて甘いのである。 危機管理に関する情報認識が甘いと言う事は、BE-PAL誌自体の危機管理意識レベルが極めて低く、現状認識能力が欠けているということを意味する。 言い過ぎかも知れない事は重々承知の上だが、同誌の社会的影響力、責任を考えると、残念だが断言せざるを得ないだろう。

 しつこいようだが重ねて言う。 BE-PAL誌の認識は誤りであり、私の認識の方が正しい。
 編集部の方々はあくまでも東京で雑誌を作っていらっしゃるサラリーマン諸氏である。 編集、出版のプロであって、決してアウトドアのプロではない。 アマチュアである。 編集部の方々は、ここを勘違いしないでよく自覚されるべきである。
 それに対して私はBE-PAL誌が対象とされていらっしゃるようなお客様の命を預かって、毎日フィールドに出るのが仕事である。 プロフェッショナルなのだ。
 プロフェッショナルである私の目から見れば、アマチュアであるBE-PAL誌編集部の判断は間違っているのである。

 私自身はあまり数字を挙げることは好まないのだが、データを目にして初めて納得される方も少なくないようなので、試しに今シーズン私がご案内したお客様の数を数えてみた。 まだシーズンは終わっていないため、これはあくまでも途中経過の数値であるが、1999年11月30日〜200年8月15日の間で407名だった。 経理上カウントしないため、数字に残っていない特殊なお客様が10名少々いらっしゃったはずだから、実際に私が預かった命の数は420前後だろうと思う。 蛇足を承知で書けば、これは安全なキャンプ場や整備された登山道でお相手した人数でもないし、静かで安全な湾内でテクニック教習をしただけの人数でもない。 実際にバック・カントリーである海原に漕ぎ出し、1日中フィールドをご案内した人々からお預かりした、尊い生命の数である。
 BE-PAL誌関係者諸兄の中で、この9ヶ月間に私並みの人数の読者諸氏の命を実際に預かってフィールドに出かけ、実際に彼らの危機管理能力、意識をつぶさに観察し、さらに彼らの生命を左右する危機管理判断をされた方は、果して1人でもいらっしゃるのだろうか? 当然だが、読者アンケートだの、キャンプ場で顔を合わせただのは数字に入らないのは言うまでも無い。 そのレベルでは読者の命を預かってフィールドに出たことにはなりはしない。
 もちろん答えは聞くまでもない。 400人どころかゼロという方が大半だろう。 これは編集部員のみならず、ライター諸氏を数に入れても大差はないはずだ。 さらにいえば、BE-PAL誌関係者のみならず、日本国内全体を見回してみても、これだけのお客さんを引率しているアドベンチャー・ツーリズム・ガイドは、おそらくまずいらっしゃらないはずだ。 日本にはまだそれだけのアドベンチャー・ツーリズム・マーケットが育っていないのだから、当然の話だ。
 別段このエリアのガイドとしては多い数字でもないから、私自身はこの数字をを誇るつもりなど毛頭ないのだが、これだけの経験に基づいて「日本人の危機管理意識は極めてオソマツである」と発言しているという事実はご理解頂きたい。 しかも、この人数はすべてが日本人というわけではなく、世界各国からのお客様を取り混ぜての人数であり、かなり客観的に日本人と外国人の比較をしているのである。
 そうしたプロの意見を軽視して「暗黙の了解である」などと反論するBE-PAL誌の態度には、正直言って呆れざるをえない。 ご存知のサンプル数も極めて少ないはずだし、そもそも外国人のレベルも知らないはずなのに・・・。
 プロの提供する情報をキチンと処理する能力こそが危機管理の第一歩である事は『その3 意識について』で詳述した通りである。 BE-PAL誌はこの時点で危機管理失格と言わざるをえない。 まるでBE-PAL誌はあそこで悪い例としてあげたタケシを地で行ってるような印象さえ受ける。 これが日本のアウトドア・マスコミの実体かと思うと、目の前が暗くなってしまう・・・

 3.に関する解説が長くなった。 次に4.だが、これは問題ない。 まったくその通りだ。

 さて、5.も問題だ。 要は「危機管理情報はこれでOKだと判断した」とおっしゃってるわけである。 どこが十分なんだろう??? 同誌をお読みになってらっしゃらない方にはお分かりにならない事だが、本当に危機管理情報が何も盛り込まれていないカヌー特集だったのである。 私は紙面を舐めるようにして危機管理情報を探しまくったのだ。 徹底的に読み込んでみて、あえて好意的にそれらしき情報を挙げるとすればPFDのページがそうだといえるかもしれないなぁ、というレベルだったのである。 その代わりに『ロール不要』などという危機奨励情報は、ドカ〜ンと載っていたというわけだ。

 そもそも問題なのは「これでよし」としたことは書かれているが、1番大切なその判断基準が示されていないという点である。 私はBE-PAL誌の危機管理情報欠落を批判したのである。 それに対する返信として「これで危機管理情報はOKと判断をした」旨を書いておきながら、その判断基準が示されていないのは大いなる手落ちである。
 私が自分の危機管理判断に異論を挟まれた場合、きちんと自分の判断のスタンスを説明し、相手の判断基準と照らし合わせて協議するに決まっている。 ことは人命に関わることなのである。
「オマエの危機管理判断はマズイ」
と指摘されるという事は、本当にエライ事なのである。 即刻話し合って、判断基準を見直す必要がある。 自己弁護するのは後からでいい。 言い訳している間に人が死んだら取りかえしがつかないのだ。

 危機管理能力欠如を指摘されて、平然と「これでOKだと思いました」と言ってそれだけで終わりにしてしまう神経は、恐ろしいというより他に私は表現方法を知らない。 ここ1つとってみても、いかに曖昧な態度で判断がなされているかが如実に読み取れるのである。

 最後の6.は一見素直に反省しているように見える部分であるが、ここまでお読みになればこの部分の性質の悪さもご理解いただけると思う。 『危機管理能力欠如』の問題、及び、『紙面の雰囲気重視』の問題を、
RYUさんのように考える方もいるということに気がいたらない部分がありました。率直に反省したいと思います。
と、「表現上の問題により読者に上手く伝わらなかった」と摩り替えているわけだ。 表現上の問題なんか反省して下さらなくて結構、その代わり己の危機管理能力のなさをよぉ〜く思い知っていただきたい。
 実際には、これは表現上の問題で誤解が起こったなどという生易しいレベルの話ではない。 プロをなめちゃいけない。 いくら表現が不味くたって何を言いたいかを読み取るだけの読解能力は備えている。 それこそが危機管理上の情報収拾能力に他ならないのだから当然だ。 前述の通り、こちらは紙面を舐めるようにして危機管理情報を探しまくったのである。 これを表現上の問題に摩り替えようなどというのは、厚かましいにも程がある。 故意に摩り替えようという気がないのなら、やはり危機管理能力ゼロである。

 先ほどの5.の部分で述べた事と完全に重複するが、大切な事だから敢えてもう1度言わせていただく。 「これでよし」と判断したとおっしゃっているが、そもそも私にいわせればどこをどう見ればこの紙面で「これでよし」という判断が下せるのか、まったく理解出来ないほど危機管理上オソマツな代物なのである。 きちんとした危機管理意識をもって紙面作りをしたならば、ここまでオソマツな代物が出来あがるはずがないのであり、 つまり、あくまでも問題点はBE-PAL誌自身の危機管理意識不足に起因する判断ミスにある。 私が編集長だったら、企画会議で『ロール不要』なんて記事の提案が出た段階で
「バカ野郎! オマエ読者殺す気か!? クラス6の瀬に放り込んで頭冷やしてやろうか!? やるんだったら『ロールは楽勝だ!』って記事だろうが!!!」
とどやしつけるところである。 いや、もし私が編集長じゃなくて昨日入ったばかりの新入編集部員だったとしても同じことをいうだろう。 『ロール不要記事』の担当なんかに指名されたりなどしたら、その場で辞表を懐に入れて社長に直談判だ。 危機管理能力をもった人間が集まって相談したならば、こんな人命軽視の企画が通るはずが無いのだ。
 「危機管理情報の欠落した雑誌を作る」ということは「危機管理能力がない編集部である」と全く同義なのである。
 これをあくまでも表現上の問題として片付けようとするならば、『責任逃れのために問題を摩り替えようとする姑息モノ』か『ここまでいわれてもまだ己の危機管理能力不足に気付かない大間抜け』かのどちらかである。

 もちろん、ここでもBE-PAL誌に悪意はないのだろう。 あくまでも本当に素直に反省されたのであろう。 決して姑息な真似をされていらっしゃるつもりはないのだと信じたい。
 危機管理能力のないものに、危機管理判断スタンスの説明を求めるのは無理である。 BE-PAL誌の危機管理能力の低さは私の想像レベルを遥かに超えているようだから、この反応もある意味しかたないともいえる。 危機管理情報よりも紙面の雰囲気を重視してしまうという態度も、危機管理能力の欠如に起因していることは間違いないわけだし。
 しかし、もちろん「仕方ない」で済むわけは無いのである。




 さて、ここまで揚げ足をとるようにして、いかに同誌の危機管理能力が欠如しているかを解説してきた。 これは読者諸兄にご説明しようというよりは、実はBE-PAL誌ご自身に自覚していただきたいがためと思っての事である。
 しかし、揚げ足取りのような論破の仕方では感情的に反感を買い、かえって逆効果のこともあると思う。 私自身としても、本音を言えばこのような重箱の隅を突つくような論旨展開は好むところではない。 だからここからは、総括的に私見を述べる。

 BE-PAL誌は極めて大きな社会的影響力を持つ大メディアである。 だから同誌の危機管理能力欠如は、善意・悪意の別を問わず極めて重大な結果に結びつく恐れがある事は同誌を含めて万人の認めるところであろう。 同誌にとっては危機管理能力ゼロの烙印を押される事は承服し難いかもしれないが、プロである私の判断を受け入れられないという段階で、すでに危機管理能力ゼロであることをご理解頂くより他はないであろう。 危機管理能力のあるものは、自分より能力の勝ったものからもたらされる情報は、よほどの事情がない限りは信頼するものである。

 同誌のような雑誌はいわばアウトドア・ガイドなのである。 方法はまるで違うが、本質的には私がやっている仕事と全く同じなのである。 お客様(読者)をフィールドに誘うキッカケを与え、アウトドアの楽しみを伝える。 これが仕事だ。
 しかしガイドの仕事は楽しませる事だけではない。 『危機管理考』トップページに記した通り、楽しいツアーは安全が保証されてナンボのモノなのである。 ガイドとしては、楽しさよりも安全の方を絶対的に優先しなくてはいけないのである。 2本の柱である『安全』と『楽しさ』、比べれば前者の方が各段にプライオリティーが高いのだ。 『ガイディングのいろはのい』以前の、基本にも入らないほど当り前の話である。 『楽しさ』の方にプライオリティーをおくなど、もってのほか、バス・ガイドとしたって失格だ。

 そういう意味で、残念ながらBE-PAL誌は、現段階では完全にアウトドア・ガイド失格なのである。 我が社の見習い後輩ガイド達のレベルにも遥か遠く及ばない。 しかしその失格ガイドであるBE-PAL誌がガイディングしているお客様は、なんと月々30万人にも及ぶというのである! 実際には読者全員がフィールドに出かけられるわけではないだろうが、複数回出かけられる読者もいらっしゃるだろうから、延べで勘定すればやはり数万人単位の読者が同誌のガイディングによりフィールドに出かけているはずなのである。 つまり、ほとんどガイディング経験のない編集者、ライター諸氏が集まって作った雑誌は、とことん訓練を受けているプロのガイドの、数百倍、数千倍の人間をガイディングしているのである。 危機管理能力はプロ失格なのに、人気No.1でお客様が殺到するトップガイドなのである。 これがどれほど恐ろしい状況か、お分かり頂けないだろうか?
 一刻も早く、読者の危機管理管理能力レベルのみならず、ご自身の危機管理能力不足に気付いていただき、しかるべき社会的責任を果せる一流ガイドになって頂きたいと切に願う次第である。 「我は天下のBE-PAL誌編集部員(ライター)なり」などとふんぞり返っていないで、当ページを読んだり拙サイト掲示板で意見交換したり、実際に読者の命を預かってバックカントリーに出かけたりして、危機管理能力を鍛えていただきたい。
(●追記● アップしたその日のウチに掲示板にWAVE RANGER代表freewheel氏より、
『BE-PAL編集部無料シーカヤック危険体験講習請け負います。』
という頼もしくもありがたいお申し出が投稿された。 先方は冗談では無いはずだ。奮ってご応募頂きたい>BE-PAL編集部各位)

もちろん、プロのアウトドア・ガイド並みの危機管理能力を身につけろ、とまでは要求しない。 しかし、こうしてプロが呈している苦言をきちんと理解出来る程度の危機管理判断能力は一刻も早く身につけて必要があるだろう。 私のいっていることをキチンと理解出来ない現段階の能力では、いずれお客様を死なせてしまう事になる。 いや、実はすでにそういう事例が起こっていないとは断言出来ない。

 しかし正直いって非常に落胆した。 BE-PAL誌にここまで危機管理能力が欠如しているという事実は、私にとってもかなり大きなショックだったのである。 私は創刊直後からの愛読者であったから、私自身のアウトドアに対する姿勢は、他ならぬBE-PAL誌から学んだ部分が大きいのだ。 師のオソマツぶりは、出来ることなら知りたく無いものだ。
 そういう意味で、考えようによっては、「危機管理能力は十分にあるが、商売上の観点からあえてそれを無視した紙面作りをされていた」という方がまだマシだったかもしれないとさえ思ってしまう。 ま、そのような非人道的拝金主義的な姿勢は、それはそれで別の意味でメチャクチャ大きな問題ではあるのだが・・・。

 同時に読者諸兄も、自分の命は自分の自己責任で守るという自覚を持っていただき、各自が危機管理能力レベルをアップするように心掛けていただきたいと思う。 ここまで読めばお分かりだと思うが、これは何も今回のBE-PAL誌2000年6月号に限った話では無く、メディア全体に関して言える事なのだ。 今回はたまたま目についた極端な例として当該記事を俎板に上げただけであり、褒められない実例はそこここに散見されるのである。 これを見ぬく力は、自己責任において鍛えるより他ない。 自分の命は自分で守るしかないのだ。 雑誌の危機管理レベルを看抜く力も、やはり危機管理能力である。




 ここからは、直接『危機管理』に関係ないことをいくつか。

  •  まずBE-PALオフィシャルサイトでこの『危機管理考』をご紹介頂く件だが、こちらの探し方が悪いのか、どうも見つからない。 日本からの報告を聞いても、最新号の紙面中にもそれらしき記事はないという。 見せ掛けだけの誠意だとしたら、非常に残念である。
     せっかくプロが善意で、しかも無料で、記事の欠陥をこうしてフォローしているというのにねぇ・・・。 自分とこの編集部でフォローする手間を考えれば、このページを紹介する方が手っ取り早いと思うんだが・・・。

  •  冒頭に
    RYUさんのホームページを拝見しましたが、内容の大変な充実ぶりに驚かされまし た。
    1冊のムックに匹敵するボリュームとクオリティだと感心しました。プロの編集者と しては 出版の素人の方にこういう仕事をされると我々の作る本が売れなくなって本当に困り ます。
    (笑い)

    と書いていただいた。 プロの編集者の方にこう言って頂けるのは、非常に光栄な話だ。
     しかし、ある意味当然でもあるのだ。 プロの編集者、出版社などのマスコミの力を借りないとメッセージを発信出来ない時代は終わりを告げた。 個人がこうして『メディア』を持つ事が出来る時代なのである。 こちらは、この方面に関してはプロである。 大袈裟なことをいえば、ムックの5冊や10冊を書くだけのバックボーンは持っているし、取材で得た内容でなく自分の体験に基づくものであるから、出版社が編集するものよりクオリティが高い場合だって当然ありうるのだ。
     これは何も私の事を言っているわけではない。 一般論である。 実際アウトドアの世界でも、プロの方が公開していらっしゃる極めてハイ・レベルなサイトはたくさんある。 他のジャンルも同様だ。 そこらの雑誌やノウハウ本ではまるで太刀打ち出来ないような素晴らしい代物が、無料でネット上に無造作に転がっているのである。
     「多寡が無料情報、それなりの内容だろう」
    などと侮る事勿れ。 スポンサー無しだからこそ書くことの出来る内容っていうのも少なくないのである。 このBE-PAL誌批判記事だっていい例だ。 もしこのサイトがBE-PAL誌の広告を掲載して広告料を受け取っていたとすれば、絶対に書けない内容である。 そういうことなのだ。 ちなみに私自身は、内容のクオリティを維持するため、このサイトに関しては今後もスポンサーを募集するつもりは一切ない。

     話が弱冠脱線気味となった。 軌道修正しよう。
     アウトドア・ライタープロ・アウトドアズマンは、似て非なるものである。 前者はあくまでもプロの分筆家であり、後者はアウトドアのプロである。 両者がノウハウを記した場合、文章は前者の方が上手いだろうが、内容的には後者の方が勝るはずなのだ。
     これからますますこの傾向は強くなる一方だろう。 ここでBE-PAL誌が冗談半分におっしゃっていることは、近い将来現実のものとなるのではないだろうか? 出版の素人の方にこういう仕事をされるとと書いていらっしゃるが、まさに出版のプロの手を借りる必要がない時代が到来しているのであるから、こういう仕事をする出版の素人は今後増える一方に決まっているのだ。
     こういう時代において、プロの助言を無視しているようではマスコミの将来も危うい。 特にアウトドアの世界ではプロとアマの差が顕著だ。 マスコミ人自身、自分はプロのアウトドアズ・マンではなく、アウトドアに関してはアマチュアであるということをよく意識しておかれないと、プロがネット上に無料でばら撒く情報によって足元をすくわれることになるだろう。 スポンサー無しでプロが本音で書く無料の情報は、大マスコミを揺るがす力を持つようになる。 これは間違いない。 意識レベルの低いところは、当然淘汰されるだろう。 この意識レベルの中には危機管理意識レベルも含まれてくるのは、いまさらいうまでもないことである。




● 追記

 先ごろ同誌2000年8月号が届いた。 『水深3mの楽園発見』と題されたスノーケリング特集だったが、6月号のカヌー特集に比べれば、各段に危機管理情報の多い紙面であった。 十分とは言い難い部分、「これは危険な書き方だなぁ」と思う部分も無いわけではなかったが、それでもまずまず許容範囲だったと思う。
 ただし、30万人を率いるプロフェッショナル・アウトドア・ガイドというつもりでみれば、やはり甚だ危なっかしい3流ガイドさんである感は否めない。
 さらに、6月号より遥かにましとはいえ、同号の編集は『その6 雑誌に見る悪い例』の批判をお読みになった段階ではもうほとんど終了していたはずであるから、当サイトの批判を受けての改善かどうかは明かではない。 そういう意味で、当サイトの批判の影響が完全に現れるのは9月号以降のはずである。 今後の推移に注目して行きたいと思う。
 なお、9月号を入手した友人から、すでに特集記事中の問題点を指摘する声が届いている事を付け加えておこう。






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