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その2 シーズンオフだからこそ『笑える話』







 前回いきなり理科の教科書みたいなページを作ってしまって、完全に息切れした・・・(^_^; トラフィック軽減のためになるべく画像は使わない方針のサイトなのに、結局必要に迫られて教科書風画像を何枚も作る羽目になってしまったし。 すっかり懲りてしまって「もう当分理科のページはゴメンだぁ!」になってしまった私。

 というわけで、今回はガイド裏話だ。 とはいえ、すぐにエピソード紹介にいくわけにはいかない。 ここと日本ではあまりに事情が違いすぎるのだ。 ちょっと退屈かもしれないが、ここと日本のシーカヤッキング・シーンの背景の違いを読んでいただきたい。

 日本のシーカヤック・ツアーといえば、ほとんどがアウトドア・ショップ、カヤック・ショップあるいはカヤック・スクールやアウトドア雑誌が主催するものだ。 だからおそらく客層はほとんどがアウトドアズマン、あるいはその予備軍だろうと思われる。 シーカヤッキング初体験っていう方は少なくないだろうが、「アウトドアのイロハも知らないし、そもそもそんなモノ知りたいとも思ってない」なんていうお客さんはほとんどいらっしゃらないんではないかと思う。 あ〜、なんて羨ましいんでしょ!

 翻ってニュージーランドを見てみると状況は全く違う。 ご存知の通りこの国はアウトドア超大国であり、観光が主要産業という国だ。 当然アドヴェンチャー・ツーリズムがメチャクチャ盛んである。 シーカヤッキングはその中の大きな柱の1つだ。 特にこのエイベル・タズマン国立公園エリアは国一番のシーカヤック・フィールドなので、13社のシーカヤック・ツアー会社がひしめいている(2000年4月現在)。 驚く事無かれ、この13社の中でカヤックを販売しているいわゆる『ショップ』は1社だけだ。 つまり残りの12社はツアー専門会社。 他のジャンルがメインで片手間にカヤッキング・ツアーもやっているってな会社も多いのだが、反対にシーカヤッキング・ツアーだけを専門的にやっている会社だけを数えても片手ではとても足りない。 これらの会社が毎日運行しているのだ。 ちなみに当社はそういう専門会社の中の最大手だ。 当社にはシングル、タンデム艇合わせて100名分のカヤックがある。 これだけのシートが夏季には2ヶ月以上にわたって毎日完全に塞がってしまう。 No.2の会社もほぼ同数の定員数をさばいている。 つまり、それだけ需要があるのだ。

 これがどれくらいスゴイ事だかまだピンと来てない方のためにもう少し数字を挙げてみようか。 日本の人口は1億2,500万人、対するここエイベル・タズマン国立公園を擁するネルソン地方の人口は8万人弱。 そのエイベル・タズマン国立公園で1日にシーカヤッキングしている人間の数はピーク時でおそらく300人は下らない。 たぶん400人近いはずだ。 ひょっとするともっと多いのかもしれない。 日本と違って、週末だけの数字ではない。 毎日の話なのだ。 おそらくこの人数、日本のピークシーズンの週末のシーカヤック人口に匹敵、または凌駕しているのではないだろうか? 日本全体でシーカヤッキングを楽しんでらっしゃる方は、おそらく1日に直せばピークシーズンでも100名を切るだろう。 とりあえず、分かりやすいように数字を丸めて『日本の1日のパドラー数を100名』、『エイベル・タズマン国立公園の1日のパドラー数を400名』、『日本の総人口を1億2,500万人』、『ネルソン地方の人口を8万人』としよう。 これらの数字を元に両エリアの『1日当たりのパドラー数:人口』という人口に対するパドラー率を比較してみようっていう企画だ。 日本のパドラー率は
 100 : 125,000,000 = 0.0000008
対するエイベル・タズマン国立公園のパドラー率は
 400 : 80,000 = 0.005
両比率を比較してみると
 0.005 / 0.0000008 = 6250
つまりこのエリアのパドラー率は、日本の6250倍ということになる!!!
 ちなみにこの数字、このエリアの数字は控えめに、日本の数字は多めに見積もっているつもりなので、実際には軽く1万倍以上の差が出るような気もしている。

 ま、これは数字のマジックというヤツで、いじくり方次第で数字なんてなんとでもなるっていう見本のような例だ。 だから『数字が如実に物語る』なんてセリフを鵜呑みにしちゃイケナイ、なんてことを言いたいわけじゃない(爆)。 ここで言いたいのは、「日本では考えられないほどの凄まじい人数がカヤッキングに挑戦していることはおわかりいただけたことでしょう」ってこと。 つまり、ネルソンにいらっしゃったお客さんは、アウトドアに興味のない方でも、とりあえずお約束という事でシーカヤッキングに挑戦してしまうというパターンが極めて多いという事を意味しているのだ。 例えていえば「せっかく関西に来たんだからお好み焼きとたこ焼きは食べなきゃ!」っていうノリで、「せっかくネルソンに来たんだから、エイベル・タズマンでシーカヤックやらなきゃ!」になってしまうのだ。

 これはアウトドア・アクティビティの敷居が低いという意味では大変喜ばしい事である。 特に日本人の場合
「アウトドアには興味があったが、日本ではなかなか敷居が高くてきっかけがなかった」
っていう方は非常に多いし、ニュージーランドで体験したアウトドア・アクティビティをきっかけにすっかりアウトドアの世界にハマッてしまう方も少なくない。 ウン、素晴らしい事である。 その一端を担っていると思うと、私自身も物凄くヤリガイを感じてしまうのである。

 ところがこれは同時に目が点になるような事態にもちょくちょく出くわすという事をも意味している。 渋谷あたりでうろうろしている針金のような手足をしたコギャルのお姉さん達は日本のシーカヤック・ツアーに参加することはないだろう。 しかし、ここでは彼女達はツアーに参加するのである!! 正直な話、私がガイドするお客さんの場合、カヤッカーはいうに及ばず、アウトドアズマンさえ珍しいのである。 アウトドアズマンがお客さんの中に1人混じっている日なんか、ワタシャもう嬉しくってウキウキなんである。 だからカヤッカーの方が来て下さった日にゃ、ワタシャそりゃもう舞い上がっちゃって大変なことになってしまうんである。 そういう客層なんである。

前置きが大変長くなってしまったが、そんな毎日の仕事の中で出会う、よくある出来事を拾い出してみた。



● 大丈夫!この靴は完全防水だから!!

 いうまでもなくシーカヤッキングといえば紛れもなくアウトドア・アクティビティの1つだ。 アウトドア初体験というお客さんの中には異常に意気込んでいる方も少なくない。 これは特に欧米人に多いパターンだ。

 意気込みはまず足元に現れている場合が多い。 新品下ろしたてのピカピカのトレッキング・ブーツを履いて来たりするのだ。
 ウンウン、わかるわかる。 新しいブーツを履けば気分は高まり、気合も入るってもんだ。
 もちろん当社ではパドリング用にネオプレーン・シューズをご用意している。 ところが、この意気込み君達は自信を持って
「いやせっかくだが、オレはこのブーツでいい!」
というのだ!

ガイド
「濡れますから、こっちのパドリング・シューズを履いた方がいいですよ」

意気込み君
「いや、大丈夫!!このブーツはゴアテックス・ブーティ内蔵なんだ!!ゴアテックス・ブーティーって言うのはな、ゴアテックスという防水透湿素材をソックスの形にしたモノでだな、これを使ってあるブーツは・・・」

講釈が始まってしまいます・・・(^_^; もうここまで来るとこっちはもう笑いをこらえるのに必死だ。 知っとるっちゅ〜ねん!こっちはプロやっちゅ〜ねん!!(^_^; 
 こういう方達はゴアテックス・ブーティの威力を試したくてウズウズしてるので、
「乗り降りの際はこうやって、こうなって、場合によってはこんなふうに膝上まで水に浸かる事になるからゴアテックス・ブーティだろうがゴム長だろうが中まで完全にビショビショになりますよ」
と懇切丁寧にご説明申し上げないと納得して下さらない。

教訓 その1
 『防水の靴』とは『中に入った水も出て行かない靴』のこと也




● それも確かにサングラスには違いないんだけど・・・

 ニュージーランドの紫外線量は日本の7〜8倍といわれている。 主な原因はもちろん南極上空のオゾンホールなのだが、実は3倍説とか5倍説など色んな話があって実際どうなのかは私にはよくわからない。 多分データの取り方によって差が出て来るのだろう。 ただ、経験的な話をすれば1999年8月に真冬のニュージーランドから真夏の成田に飛んだとき、予想や覚悟がいとも簡単に吹き飛ぶほどの蒸し暑さに驚愕したと同時に、紫外線だけは逆にニュージーランドより遥かに優しかった事に再度驚いたものだ。 だから7〜8倍っていうのは妥当な線だと思っている。 まぁ、何倍っていうのはそんなに大した問題じゃない。 とにかく真夏のエイベル・タズマン国立公園でシーカヤッキングするとなると、紫外線量は日本のスキー場の比ではないっていう事だ。 だから、サングラスは必携である。

 欧米人の場合はさすがにサングラス慣れしているので、サングラスを忘れる方も少ないしファッショングラスとスポーツグラスの違いもキチンと認識していらっしゃる方が大部分のようだ。 ところが、日本人の場合、まずサングラスがいるなんて事を夢にも思ってない方が少なくない。 さらに、サングラスを持っている場合も芸能人がかけるような超小型レンズで薄いオレンジ色や水色などの、完全なファッショングラスを持ってこられる方がけっこう多い。 ここをお読みのアウトドアズマン諸氏にはいうまでもないことだろうが、この手のサングラスの場合は視界が若干暗くなる事により瞳孔が開き、そこにまわりからどんどん紫外線が飛び込む事になるので、かえってかけない方がマシっていう事もあるのだ。 もちろん、こういう場合は会社の方で用意しているスポーツグラスをお貸しする。 ところが特に女性の場合、「カッコ悪い」といって頑なにご自分のサングラスをお使いになりたがる方が少なくない。 彼女達にとってはサングラスはあくまでもファッションアイテムであり、大事な目を保護する道具という発想がないらしい。

教訓 その2
 サングラス かけて中田を気取れども すべて無にする スプレースカート




● えぇっ!? 濡れるんですかぁ!!??

 当たり前ですっ! カヤッキングはウォータースポーツですっ! なんだと思ってるんですかっ!!?? 観光遊覧船のつもりなんですかっ!!!??? 公園のボートじゃないんですよっ!!!!!

 あぁ、スッキリした(^_^;  実際にはお客さんに向かってこんなこと言えようはずもない。 これは心の叫びである(爆)

 この手の方、実はけっこう多いのだ、日本人女性に。
「お金払って素人が参加するアクティビティだから、まさか濡れるなんてことがあるはずがない」
と、根拠もないままになぜか固く固く信じてる方・・・。 サングラス同様、ブローシャー(パンフレット)にも「水着持参で来てください」と書いてあるのだが、信念岩をも通す、どういうわけだか「そんなもの要らない」と勝手に思い込んで水着も短パンもなしで乗り込んでいらっしゃる。 んで、この手の方はやっぱりサングラスの方と同様、「お貸ししますから短パンに着替えた方がいいですよ」と申し上げても「大丈夫です」と来る。 大丈夫じゃないっつ〜の!濡れるっていったら濡れるの!! 下着は普通の木綿のパンツに普通のブラジャー、その上にジーンズと普通のシャツっていう格好でツアーに出ようとするんだなぁ、この手の方。

教訓 その3
 シーカヤッキングはディズニーランドのジャングルクルーズにあらず




● 旋回症候群

 北欧の人にまれに見られる病気だ。 ヨーロッパの若者の場合、シーカヤッキングを『スポーツ』と捉えることが少なくない。
日本人の場合はどちらかというと『リラックス系』と捉えており、私自身もその例外ではないのだが、彼らにとってはあくまでも『エクササイズ』らしい。 もちろん白人全員がガシガシ漕ぎたい人ばかりじゃない。 むしろガシガシ派はやっぱり少数派だから、こういう人達の乗ったタンデム艇は1艇だけドンドン先に行ってしまうことになる。 ま、これはガイドにとっては困った事態なんである。 だからある程度距離が離れるとストップをかける。 普通はジッとその場でグループが追いつくまで待っててくれる。 ところが北欧の人の場合、辛抱たまらずUターンして戻って来て一旦グループと擦れ違い、グループの後方で再度Uターンしてまた改めてブッちぎって行ったりする方がいらっしゃったりする。 こういう人の場合、グループ全艇がストップしてガイドの解説を聞いている時も、ガイドのまわりをグルグルと旋回していたりする。 その有り余った体力、出来ることなら分けて欲しい・・・(^_^;

教訓 その4
 帰りに疲れても、牽引してもらえると思うべからず




● 私もやるぅ!!!

 リクエストがあった場合、エスキモーロールをご披露することもたまにはある。 前述の通り、ここのお客さんの場合は99%の方は実際にロールを見るのは初めてだし、そもそも過半数のお客さんが『エスキモーロール』っていう言葉さえ知らない。 だからお見せしても
「何がどうスゴイのか分からない」
なんていう拍子抜けしてしまうような方も時々いらっしゃる。

 ま、そんな方は少数派で、だいたいのお客さんは喜んで下さる。 沈してからわざとしばらく水中でジッとしてると
「ひょっとして失敗して水中で溺れてるのか?」
などと随分ヤキモキしてくださる方もいらっしゃるようで、起き上がって来た時すかさずお客さんの顔を見まわすとこれが結構面白い。
「おぉぉ!スゲェ!!」
っていう顔をされている方に混じって、たいてい一人や二人はホッとした表情をした方がいらっしゃるのだ。 ご心配頂き、どーもありがとーございます。 おどかしてゴメンね(^_^;

 ところが今まで一人だけ
「うわぁ、カッコいぃ〜い!! 私もやるぅ!!!」
というが早いか、私が止める間もなく、自分も沈しようとしたお客さんがいらっしゃった! 日本人女性のお客さんだったが、彼女もシーカヤック初体験、しかも実際に目の当たりにするまでエスキモーロールなんて言葉さえ知らなかった方だ。
『目の前で見た瞬間、感動の余り自分でもやってみたくなった → すぐにやってみようとした』
ということらしい・・・。 しかも彼女が乗ってたのはタンデム艇! リアシートに座っていた相棒の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。

 幸いにも人並みはずれて小さな方だったので、一人の力ではタンデム艇をひっくり返すことが出来ず、大事には至らなかったのだが・・・。 それでも彼女は諦めきれなかったらしく
「やってみたいなぁ。ねぇ、やってみたくない?」
と相棒に言い続けてました・・・。

何を隠そう、今シーズン中で一番焦った出来事でございました(^_^;

教訓 その5
 見ただけで 出来ると思うな C to C









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