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その10 『シーカヤックミーティング in 牛窓』の舞台裏







 気がついてみれば、あの伝説(?)のイヴェント『シーカヤックミーティング in 牛窓』から、早もう7ヶ月もたってしまっているではないか。 他のメディア向けには、いくつかレポートを書いたりしたものの、肝心のこのサイトには何も記すことなく、あっという間に時間がたってしまった。
 時間がなかったわけではない。 無論、書くことがなかったわけでもない。 むしろ、私としては書くことがありすぎて、時間が足りなかったというのが本音。 なんせ、私にとっては「何もかもが初めての経験」だったのだ。 日本の海を漕ぐのも実質初めてならば、大きなイヴェントを主催するのも初めてだし、共同主催者のG-Outfitterの面々と実際に顔を合わせるのも初めてならば、「日本のシーカヤッカー」を目にするのも事実上ほぼ初めて。 こんな状態だから、得るものがありすぎて、まったく自分の中でこの経験がまとまらず、言葉にすることができないままに月日がたっていったというのが、正直なところだ。
「日本でのパドリング体験、牛窓体験をもとに、何か書かなくては」
という焦りだけは、この7ヶ月間ずっと心の中にくすぶりつづけていたのだ。 そして、この一点にとらわれすぎたために、他のページに手をつけることもままならず、結果としてこのサイトの更新はパタリととまってしまっていた、というわけである。

 そうこうするうちに、なんと年が変わってしまった。 こりゃイカン、とにかくあのイヴェントについて、何かこのサイト上にも記しておかねば。
 というわけで、以前Seakayaking Worldに寄せた原稿に大幅に加筆し、ここに掲載することにした。 (原文はイヴェント直後の2001年6月上旬に執筆したもの。)
 本当は、このイヴェントを体験したことによって大きく変わった私自身の内面について、もっともっと語りたいところなのだが、正直いっていまだにその変化は続いているため、いまだに文章にするだけの熟成が足りない。 これは将来の課題として、とりあえず今回のところは、ここに『レポート』を残しておくことにする。

 では、「『シーカヤックミーティング in 牛窓』の舞台裏」にご案内しよう。












『シーカヤックミーティング in 牛窓』の舞台裏



● 参加者の声

拙サイト『シーカヤックミーティング in 牛窓 専用掲示板』(現在は削除済み)より


 ○ 初体験者、初心者カヤッカーの部

「もうトロケテとろけて、仕事になりませ〜ん!」

「カヤックにあれほどたくさんの荷物が積めるとは思っていませんでした。
次回はクーラーボックスに凍るくらい冷たいビールを。」

「なんだか、新しい広大な世界が開けた感じです。」

「どんなラインを通っても、スピードも自由というシーカヤックは、ほん と、目から鱗でした。
病みつきになりそうです。」

「初めて乗ったシーカヤックは水面にちょこんと座っている。
そんな感じで、適度な揺れも心地よくついついウトウト....(^^;」

「浜辺でのキャンプもとても楽しくて、まずはニュージーランド土産の軽食でワイワイ。
夕食はRyokoさんとG-Outfitterのスタッフが作ってくれたダッチオーブン料理に舌鼓。
(* ̄▽ ̄*) ハァ〜デリシャス♪  
いやいや、もう、サイコーでした。」

「小鳥のハーモニーが素晴らしい爽やかな早朝。
潮の香りが目覚めのキス。
朝食はボンゴレ・ロッソリゾット&ザーサイ入り中華粥。
Ryu&Ryokoさん、G-Outfitterの吉川さん&スタッフのみなさん
楽しいひとときをありがとうございました。」

「とにかく感動の渦。
楽しすぎますぅ!!!
お天気も良かったし、景色もきれいし、テントで寝るのも小学生以来だし、ダッチオーブンは優れものだし、波の音は優しいし、皆親切だし、皆面白すぎるし、焚き火は最高だし、ローソクの灯りはロマンチックだし・・・言い出したら切りがありません。
きっとイケナイ世界をのぞいてしまったんでしょうねぇ。」




 ○ベテランカヤッカーの部

「飯さいこーにうまかったっす。
おいらのカヤック生活に足りなかったのは採れたて×××と焼きマシュマロだー!!」

「600キロ運転して駆けつけて、お釣りがきた気分です。」

「なんか昨日のことなのに夢のように遠い日々に感じてしまうのはなぜでしょう?
どうやら楽しすぎて、脳が現実を処理できてないようです。」

「参加者50余名、フネが35艇、二日遊んで喰って(呑むは各自)なんと¥2000。
もうボランティアの世界ですナ。
毎度のコトながら新しいオトモダチ沢山出来ました」

「オフ会ってこんなに楽しいものだったんですね。
牛窓よかったよ〜。」

「それにしても近年まれな楽しすぎる宴会、もとい、パドリングでした。
牛窓、ええとこやなぁ…(遠い目)」

「みなさん、ほんとにありがとう!
心に深く刻まれた、さわやかなイベントでした。
関係者の心意気、参加者に熱く伝わったような気がします。 」

「こんな楽しいイベントは生まれて初めてでした。
カヤックのツアーでこんなに笑えるなんて本当に奥の深さを感じます。」




● プロローグ

 2001年6月2日(土)午前10時、岡山県邑久郡牛窓町の西脇ビーチに、40艇近いシーカヤックが集結。参加人数はなんと延べ約60名。
 参加資格制限を一切設けなかったため、参加者の顔ぶれを見わたすと、プロやセミプロクラスのシーカヤッカーから、カヤックは無論のことアウトドアやキャンプ自体ほぼ初挑戦という全くの初心者までが、勢ぞろい。年齢を見ても、下は20歳から上は50歳を超える方まで、老(?)若男女が入り混じり、まさに完全なるカオス状態。
 こんな大きな混成グループが大艇団を組んで島に渡り、1泊のキャンプツーリングを決行するという。果たして全員が無事笑って帰ってこられるのだろうか・・・?
「どんなグループでも、ちゃんとガイドする!どんと来い!」
と豪語して企画したものの、これだけの顔ぶれを実際に目の前にして、大きな不安に襲われるスタッフ一同であった。


● 事の発端

 そもそもの始まりは、大阪のシーカヤックガイド吉川寛G-Outfitter代表)とニュージーランド(NZ)のシーカヤックガイドRyuAbel Tasman Kayaksの、メールを通じてのいつも通りのおしゃべりだった。 5月に1年半ぶりの一時帰国が決まっていたRyuは、日本でのパドリングは未体験。 となれば、吉川を始めとするG-Outfitterの面々との間で、一緒に徳島や牛窓を漕ごうという話が盛り上がるのは、当然すぎるなりゆきだ。
 つまり、発端は単なる『G-OutfitterとRyu夫妻のミニ・オフ会ツーリング』だったのだ。

 しかし吉川が
「どうせなら参加者を一般公募して『ミニミーティング』にしてみようか。Ryuのガイディング技術を生で見たいし、Ryuにも日本のパドラーをたくさん色々見せてあげたいし。」
と言いだしたところから話は一転した。無論Ryuに異論があるはずもない。
「それが良い!参加者公募しよう! どうせなら、『未体験者も大歓迎』を前面に打ち出しそう! 日本でNZ方式ガイドツアーをやってみよう!」
 こうして『シーカヤックミーティング in 牛窓』の企画が、まったく突如浮上したのだ。 いつも通りの与太話、ホラ話をまじえての、メール上のお喋りからスタートしてしまった企画ゆえ、この時点では2人ともまさか50人を超える大イヴェントになろうなどとは、全く予想だにしていなかった。 「20人も集まれば御の字」などと、軽く考えていたのだ。 この2人、マーケティング・リサーチ能力は、決してほめられたものではない。 2001年4月初頭の事である。


● 困惑、難航、苦難・・・

 そもそもが『ミニ・オフ会』という気分で話が始まり、それにちょっと色気を出して『ミニミーティング』なんていう程度の気持ちで一般公募することを決めたこの企画だが、参加者を募ってみた途端、すぐに恐ろしいほどの反応が返ってきはじめたから、さぁ大変。 連休でもなんでもないただの週末ゆえ、大して人は集まらないとタカをくくっていたのは、大間違いだった。
 「NZからRyuがやって来る」というパンダ効果も一因だろうし、主催者がプロであるにも関わらず費用はレンタル料、食事代などの実費のみとしたのも一因だろうし、Yahoo!掲示板を中心に盛り上がっていたネット上の交流に絶好のオフ会を場を提供するタイミングになったのも一因だったろう。
 理由はともかく、実際に続々と寄せられる問い合わせの量は、吉川とRyuの予想を遥かに上回った。2人は大いに困惑し、そしてようやく事態の大きさに気づいた。

 なんせRyuはNZ在住なので実際には全く動けない。そして吉川の方は、アウトフィッターにとって大切な書き入れ時のゴールデンウィークを目前にして雑事に追われる日々。 しかも、このゴールデンウィークは雑誌等の取材が相次ぎ、彼は片付けねばならぬ細々とした仕事を普段以上に抱えていたのだ。
 しかし『NZ方式ガイディングをやるので、全くの未経験者も大歓迎』を謳ったため、未経験者、初心者からの問い合わせも、続々と入り続ける。さらに驚いた事に、プロ、セミプロの方々からも次々に参加申し込みが入る、入る、どんどん入る、まだまだ入る。 もっと驚いたことに、九州や関東からの申し込みが後を絶たない。
 ゴールデンウィーク終了時点で参加者はすでに30名を軽く突破し、40名を超える事が確実となった。 もうどこからどう見ても『ミニ・オフ会』などという可愛らしいシロモノではなく、立派な『イヴェント』規模である。

 こうなると、多くの問題点が出はじめる。 まず、吉川があらかじめ下見しておいたビーチでは全くキャパが足りない。 また、これだけの人数となると、駐車場の確保や、カヤック・キャンプ道具のレンタル数の問題も出てくる。 メンバーの多様性を見ると、いかにベテランと初心者のバランスをとって、全員を満足させるプログラムを組むかという問題も浮上する。 さらにこれだけの規模のイヴェントをやるとなると、忘れてはならないのは、牛窓をテリトリーとしている岡山、兵庫のアウトフィッター各社への挨拶だ。 とにかく、考えれば考えるほど、問題は数限りなく出てくる・・・。

 悩んでいても始まらない。 吉川はこれらの問題を片付けるべく奔走する事になった。Ryuは、NZからメールだけで処理できる仕事をすべて受け持ち、吉川を陰ながらサポートした。
 そのうちにこの企画は牛窓町観光協会の耳にも入るところとなった。 ありがたいことに、観光協会は快くバックアップ体制を整えてくれるという。 また、Gofield.comのスタッフもモーターボートを駆り、高松から総員で駆けつけてくれるという。これらのお申し出をありがたく受けながら、準備、調整はミーティング直前まで続いた。


● 仕込み、プランニング

 最後まで吉川、Ryuを始めとするスタッフの頭を悩ませ続けたのが、
「ベテラン勢と初心者勢のパドリング能力差を、いかに処理するか?」
「50以上の胃袋を満足させるにはどうするか?」
の2つ。
 前者の問題に関しては、日本のアウトフィッターの場合は『初心者ツアー』『中級者ツアー』などのようにクラス分けして対応しているところが多い。 しかし、NZのガイドツアーの場合は、まずクラス分けすることはない。 初体験者とベテランを同じグループに配し、両者に同じように楽しんでいただく、というのがガイドの腕のみせどころとなるのだ。
 NZ生え抜きのプロであるRyuとしては、今回もNZ方式の『ベテランと初心者を区別しないツアー』をやりたかった。 しかし、Ryuとしてもまったく未知のフィールドで、50名以上の人間を相手にそれをやる自信はまったくない。 いや、プロだからこそ、そういう不慣れな条件下で普段のNZ方式にこだわることの危険性をよく承知していた。
 だから今回はグループを2つに分け、行程や距離を差別化する事で決着した。 そして、より高度なガイディング技術を要求される初心者グループは吉川とRyuが担当し、ベテラングループはG-Outfitter若手ガイドのショウジと、琵琶湖カヌーセンターから駆けつけてくれた助っ人ノブに任せる事とした。

 そして食事。 これはある意味、グループ編成以上に切実な問題だ。 50人前の食事を、いかに安く、いかに簡単に、いかに美味しく提供出来るか。 プロのガイドが主催するツアーにおいて、これは非常に大きなポイントだ。 失敗は許されない。 経験豊富な吉川やRyuも、流石に50人前となるとあまりに普段と勝手が違い過ぎて今1つ明確なイメージが湧かない。 早い段階から頭をひねり続け、多くのアイディアが出ては消えた。 そして結局、イヴェント直前に吉川とRyu夫妻が合流してからも、まだいぜんとして協議は続いていた。
 結局この問題に片をつけたのは、Ryuの妻Ryokoだった。 彼女は大学時代、サークルの合宿で30人、40人規模の調理を仕切るのが常で、スタッフの中では最も大人数料理に慣れていたのだ。 彼女のひねり出したメニューが、予算、手順、クオリティなど、すべての要求をクリアしたのだ。

 ミーティング前日の6月1日(金)、G-OutfitterとRyu夫妻は徳島で潮流ツーリングを楽しんだ後、前夜ようやくまとめあげた最終調理プランにそって、買い出しに出かけた。
 とはいえ、もちろん買い出しがすんなりいったわけではない。 メニューや調理の段取りが決まったとはいえ、なんせ50人前だ。 どれくらいの食材がいるのか、誰一人として今1つピンと来ないのだ。 さすがのRyokoにとっても、これだけはハッキリとしなかった。 なんせ彼女が所属していたのは音楽サークル、片や今回は飢えたシーカヤッカー達が相手なのだ。 しかも、現地での飛び入り参加も予想されたため、恐ろしいことだが正確な参加人数は、現地で蓋を開けてみないことにはハッキリとはつかめないという始末だった。 50人前でOKなのか、それとも60人前必要なのか? そもそも50人前というのは、どういう量なのか?
 ナチュラリスト、アウトドアズマンとしては、買い過ぎて食べ物を捨ててしまう愚は、なんとしても避けたい。 しかし、プロガイドとしては、メシが足りなくて参加者にヒモジイ思いをさせるなんてのは、もってのほか。 5人はあぁだこぅだと大騒ぎしつつ、高松のスーパーをハシゴした。

 しかし、とてつもない量の食材をレジに持ち込むのは、ちょっとした快感だった。 今思い出しても、あの莫大な量には笑いが込みあげる。 ルーフトップにシーカヤックを満載した3台のワゴンが駐車場に乗りつけ、中から現れた塩まみれの汚い連中が、とんでもない量の食材を買いあさっているのだから、見ていた人達の気分を想像すると、なおさらおかしさがつのってくる。
 肉売り場から鶏肉が消えていて、晩ご飯の予定が狂ってしまったご家庭には、この場を借りて心よりお詫びを申しあげます。


● 1日目 --- 集合時刻以前 ---

 最も懸念していたのは天候だ。 なんせ50人を超えるイヴェント。 しかも西は長崎、東は千葉から、遠路はるばる駆けつけて下さる参加者もいらっしゃるのだ。 悪天候による中止だけは絶対に避けたい。 でも、避けたいといって避けられるものでもない。 まさに文字通り、天に祈るしかない。

 実をいえば、吉川は悪天候時のオプションもいくつか用意していた。 しかし、ベテラン勢はまだしも、相当数にのぼる初心者を、悪天候の中でパドリングさせるのは心苦しい。 悩んでも仕方のないことだが、胃が痛んだ。 以前は、
「日本のアウトフィッターの中には、『週に1度しかないせっかくのツアーをキャンセルするわけにはいかん』といって、悪天候でも決行するとんでもないヤツがいるそうじゃないか!!!」
と、口角泡を飛ばして批判していたRyuであったが、このときばかりはさすがに彼らの気持ちが少し理解できた気がした。 毎日毎日ツアーを運行しているNZとは違い、こうした『一発モノ』のイヴェントは、中止すればそれっきりなのだ。 このときほど、切実に好天を願ったことは、Ryuにはいまだかつてなかったかもしれない。
 しかし同時に、やはりちょっとでも天候が悪ければ、安全を最優先して中止せざるをえないだろうと腹をくくってもいた。

 吉川やRyuは1週間ほど前から週間天気予報をチェックし続けていたが、当初はあまり芳しいものではなかった。 しかし、数日前から様子が変わり、週末はなんとかギリギリ天候がもちそうな按配になって来ていた。 安定した天候になって欲しい・・・。

 そして・・・。

 晴れた。 見事に晴れた。 風も適度な追い風、潮も小潮で非常に穏やかなコンディション。 さらに、翌日の3日(日)も同様の天候が続くという。 これで、「戦わずして敗れる」という最悪の事態だけは避けられた。 よし、やるぞ!

 スタッフ一行は早朝高松を後にし、午前7時半に牛窓入り。 驚いたことに、会場に近づく頃になると、吉川の携帯に次々に電話が入り始めた。 実は会場の西脇ビーチには、すでに相当数の前泊キャンプ組が陣取っており、ハイテンションでいまや遅しと、スタッフ一行を待ち受けていたのだった。
 インターネット上だけのお付き合いだったパドラー諸氏との感動的な対面。 しかしゆっくりと談笑するひまもなく、スタッフはツアー準備にかかる。 自分達の道具や艇をおろし、受付を整備し、レンタル艇をチェックする。 特にレンタル艇はこのイヴェント用に借り出したもので、普段使い慣れた自分達の道具とはまったく勝手が違う。 念入りにチェックしておかないと、いざというときのレスキューの手順にも影響が出るので、手は抜けない。 短い準備時間の中に、やるべきことは山のようにある。

 いざ受付を開始してみると、当日飛び込み参加者も若干名いらっしゃり、最終的に延べ参加人数はかるく50名を突破してしまった。
「食事は大丈夫だろうか?」
「これだけの人数をうまくまとめられるだろうか?」
「事故のないように、キチンと配慮出来るだろうか?」
「全員のニーズをキチンと満たして、皆を笑顔にできるのだろうか?」
不安はドンドン膨らむ。
 その反面、
「大丈夫、今までとことん話し合って来たし、お客様を喜ばせるためのガイディング技術も、今までシッカリ磨いて来てある。ナントカなる。」
との思いもあった。 少なくとも吉川とRyuは、お互いにそれだけの自信と信頼を共有していた。


● 1日目 --- 開会〜夕食 ---

 集合時刻の10時に吉川の挨拶で開会。 参加者全員が一言ずつ自己紹介した後、地元牛窓でシーカヤックツアーをオペレートする現地ガイド、ペンションくろしお丸のオーナー永田氏から、漁船、ヨットなどの海上交通が非常に複雑なフィールドでの注意点の説明をいただく。 ベテラン勢も、瀬戸内は初めての方が多く、真剣な面持ちだ。
 そして初心者組とベテラン組に分かれて、いよいよパドリング。

 ベテラン組は永田氏からフィールドの詳細説明を受けた後、すぐに海へ。 もちろん全員自艇参加でパッキングも終了しているし、その大多数がネット上で既知の間柄という『オフ会色』が強いグループ。 皆いきなりハイテンションで飛ばす! その後ろを、ガイド役の若手スタッフ、ショウジとノブが大慌てで必死に追う。

 一方の初心者組、レンタル組は、Ryuのインストラクションで最低限のパドリング技術の講習を受ける。ベテラン組に遅れること30分、ついに全艇が水面に漂ったのは11時前のことだった。
 海に出てしまえばもうこっちのもの。 長い間かけてガイディング技術のノウハウを共有して来た吉川とRyuの息は、当人達が驚くほどピッタリだった。 またこの初心者組には、スタッフ側が想像したよりも遥かに多くのベテラン勢が、自主的にサポートについて下さったため、非常に安心感の高いパドリングとなった。
 天候にも恵まれているため、うるさく漕ぎ方や進路を指示する必要も全くない。 今回のイヴェントは『スクール』でも『アカデミー』でもなく、あくまでも遊びの『ツアー』。 遊びを主眼においたとき、過剰なインストラクションは百害あって一利なし。 だから吉川やRyuはうるさいことは何もいわずに、適当に参加者の艇の間を行ったり来たりして様子を見つつ、ゆっくりとパドリングする。 参加者の皆さんは、水に漂う浮遊感や、道のない自由さ、想像以上のスピード感や安定感などに歓声をあげつつ、島を目指した。

 一方その頃、ベテラン組は若手スタッフをブッ千切って自由奔放に瀬戸内を満喫していたと言う(笑)

 初心者組、ベテラン組ともに、黒島で長い昼食休憩をとり、存分にくつろいだ。
 昼食後は別ルート。 初心者組は、直接キャンプ地である前島南側のキャンプ場を目指し、ベテラン組は、黄島に立ち寄ってからキャンプ地を目指す。
 午後3時、まったくの偶然だが、迂回路を通って長いパドリングを堪能したベテラン組と、ショートカットしてのんびり漕いだ初心者組は、キャンプ場前の入り江でピタリと合流し、40艇近い大艇団が一気にビーチへと上陸開始することになった。 陸からこのノルマンディー上陸作戦さながらの様子を目にしたら、壮観だっただろうと思う。 しかし、こんな事態を予想していなかった一般の方にとっては、少々恐ろしい光景だったかもしれない。 実際キャンプ場にはデイキャンプを楽しむグループが2組いらっしゃったが、奇声をあげつつビーチに突進してくる艇の数々に、さぞかし胆をつぶされたのではないだろうか。 もしここをご覧になっていらっしゃったら、平にご容赦願いたい。

 ともあれ、大きなアクシデントも無く、全員無事上陸。 スタッフの中に、ビーチ目前で半沈した上に、バカに切れの悪いアースロールを披露している大バカモノもいたが、武士の情けでここに名前を明らかにすることだけは避けてやろう(笑)  まぁ、彼もその後大いに反省して修行をつみ、今では非常に切れのいい技を習得してアースロールの達人の異名をとっているので、改めて名を書くまでもないという話もあるが。

Happy Hour !  上陸したら、まずは各自テントを張って寝床を確保して頂き、その間にスタッフは女性陣を中心にハッピーアワーの準備。
 キャンプ場全体に色とりどりのテントの花が咲きみだれ、大きな『シーカヤッカー難民村』が完成する頃、丁度ハッピーアワーの準備もOK。 クラッカー類、数種類のディップ、NZ土産のお菓子などで乾杯! NZ名物のディップが大好評!
 もちろん、スタッフ陣の話の肴は、半沈&アースロールである。

 続いてスタッフ男性陣は、男性参加者の手を借りて薪を集め、夕食調理のために巨大な焚き火を準備。 一方のスタッフ女性陣は、女性参加者の援護を受けつつ、7つのダッチオーヴンに食材を仕込む。
Dutch Ovens ! 炭が熾きになったら、次々にダッチオーヴンを投入。 雑誌などでよく知っているものの、実際に目にするのは初めてという方も多く、親亀小亀状態で積み上がったダッチオーヴンの姿を撮影に訪れる人がひきも切らない。確かにこれだけのオーヴンを使うのはスタッフ陣にとっても初めての経験。 思わず笑みのこぼれる壮観さであった。
 メニューだが、まず主食はアルミフォイルに包んで焚き火で焼いたフランスパンのガーリックトースト。 軽い疲労に嬉しいサラダ。 そしてメインのローストチキン『シンプルな塩ハーブ味プラス温野菜ヴァージョン』『トマト味ヴァージョン』の2本立て。 さらに最後にオツマミ系として豚肉、白菜、キノコのフォイル蒸し。 いずれも大好評。 飢えたカヤッカー達に襲いかかられたオーヴンは、ひとたまりもなくあっという間に次々に葬り去られていた。 翌朝の食事に使うつもりの、ローストチキンの残りスープまでピカピカにふき取って食べ始める輩が現れたため、慌ててオーヴンを回収するという一幕もあったほどだ。 予想を上回る好評ぶりに、スタッフ全員ホッと胸をなでおろす。

 ただし、実をいえば、スタッフの口にはほとんど何も入らなかった。 当日飛び込み参加の人数が、スタッフの人数とほぼ同数だったので、買い出しの量があまりにも的確すぎた、ということかもしれない。 実はそうじゃないかもしれないが、とりあえずそういうことにして自分達をなぐさめるスタッフ一同であった。
 おつまみを分けて下さり、哀れなスタッフ一同を飢えから救ってくれた皆さん、どうもありがとうございました m(__)m


● 1日目 --- 宴会 ---

 食後は各自好きな所で宴会。インターネット上(Yahoo!掲示板)のヴァーチャル居酒屋を再現するグループ、ギターを持ち込んで歌うグループ、そして焚き火の回りで狂ったように騒ぐグループ、半沈&アースロールネタで盛り上がるグループ・・・。
 食事終了までは自粛していたスタッフも、ここで酔っ払い解禁、いそいそと酒に手をのばす。 食っていないので、酒の回りもことのほか早い。 当然G-Outfitter名物の危ない芸(拙サイト裏ページ『秘密ギャラリー』参照)も次々に飛び出し、抱腹絶倒の夜はふけていった。 焚き火回りはあまりに盛り上がりすぎていたため、焚き火を眺めてロマンチックに夜を過ごそうともくろんでいらっしゃった方に居場所を提供できなかったのが、このイヴェントの最大の反省点かもしれない(^_^;
 狂乱の宴会の様子の詳細をこの『表ページ』であるこに記すのはさすがにはばかられるので、お知りになりたい方は、次回ご参加頂いて、自らの目にしっかりと焼きつけていただく、ということにしておこう。


● 2日目

 前夜遅くまで騒いでいたにも関わらず、皆朝が早い。6時には相当数の人が起き出してゴソゴソ・・・。スタッフも2日酔いの頭を抱えて起き出し、女性陣は朝食の仕込み、男性陣は焚き火の準備。
 朝食のメニューは同じくダッチオーヴンをフルに駆使したお粥。 中華風とリゾット風の2本立て。 これまた大好評。 やはり酔った翌朝はこういうモノが美味い。ダッチオーヴンで炊くから、なお美味い。 今回はスタッフ陣も遠慮せず、われ先に粥に群がる。 さすがに空腹で海に漕ぎ出したら、お客様のフォローどころではなくなる・・・。
 うぅ、それにしても、頭がガンガンする・・・。 足がふらついて、トイレの階段から落ちそうになる・・・。

 ゆっくり食事をしたら、難民村撤収。そしてその後はキャンプ場の清掃。 上陸前よりキレイな状態にしてしまう。 シーカヤックが日本の海で受け入れられるには、こういう地道な事も忘れちゃいけない。 「立つ鳥あとをにごさず」は当然、「シーカヤッカーがキャンプした後は、浜がキレイになる」といわれるようになれば、日本シーカヤック界の未来も明るいだろう。

Raft Up ! そして、記念撮影。全員艇に乗り込み、ビーチの前で横一列にラフトアップ。これだけの艇が一直線に並ぶ光景は、世界一のフィールドで仕事をするRyuでさえ初めて目にする。壮観の一言は、このためにあるといっても過言ではないだろう。

 記念撮影を終えたら、一路西脇ビーチを目指してパドリング。 実はこの朝、スナメリ出現の報せを事前に受けていたのだが、やはり大艇団に恐れをなしたのだろう、数名が遠くに浮かぶのを目撃しただけにとどまり、全員が海洋哺乳類との遭遇を堪能するという幸運には残念ながら恵まれなかった。
 岬をまわりこんで西脇ビーチが目に入り始めると、あちらこちらから
「あぁ、もう終わっちゃう・・・」
という声が聞こえて始めた。 ガイドにとって、この言葉が何より嬉しい。 ツアーの成功を一番端的に物語ってくれるセリフだから。


● 解散

 昼過ぎに全員無事西脇ビーチへ上陸。 吉川とRyuの短い挨拶でミーティングは幕を閉じ、解散となった。 少々早いお開きだが、遠方からの参加者が多いため、やむを得ない。 しかし、やはりすぐには立ち去り難い参加者が多く、再度海に漕ぎだしてロール大会に興ずる方、アドレス交換する方、記念撮影大会をする方、お喋りに興じる方などで、しばらくビーチは賑わい続けた。


● エピローグ

 こうして突貫工事的怒涛のシーカヤックミーティングは、大盛況のうちに、無事幕を閉じた。 一度も顔を合わせたことのない2人のプロガイドが発案し、顔を合わせないままにメール上で育って行った計画ゆえに、不安は最後の最後まで拭えなかったが、結果的に大成功のうちに幕を引くことができた。 終わった時には、さすがに2人とも膝から崩れ落ちるような疲労を感じていたが、同時にそれを補ってあまりある充実感にも、みたされていた。
 その日の夕方から、続々と専用掲示板(現在は削除済み)に寄せられ始めた参加者各位の声が、スタッフの手ごたえを証明することとなり、その一言一言がスタッフ全員の宝物となった。 今回冒頭に転載させていただいたのは、その大切な宝物である。

 実はスタッフ陣は今回のミーティングを『第0回』と称している。あくまでもトライアルと捉えていたのだ。 下記データの料金をご覧になればお分かりの通り、プロ主催のイヴェントにもかかわらず今回はスタッフ陣は完全な手弁当なのは、そのためである。
 しかし、今回のイヴェントの成功と、そこから得られた反省点のフィードバックにより、次回はさらなる超強力な面白いイヴェントにする自信を深めた(もちろん、お天気次第ではあるが・・・)。 よって来る『第1回』にご参加される皆さんは、宴会のための肝臓と、笑い死にしないための腹筋を、しっかり鍛えてからご参加頂きたい。 パドリングのための筋力は、別段お気になさる必要はないだろう(笑)
 もちろん次回は少々の値上げはさせて頂く事になると思うが、その分はお釣りが来るほどパワーアップしておくことをお約束しておこう。


● スタッフ

吉川 寛 (G-Outfitter:大阪)
久川直子 (G-Outfitter:大阪)
小前昭二 (G-Outfitter:大阪)
林 修正 (琵琶湖カヌーセンター:滋賀)
Ryu (Abel Tasman Kayaks:NZ)
Ryoko (ISPA、NZROHA:NZ)
  (敬称略、順不同)


● 協賛・協力

ペンションくろしお丸(牛窓) http://www.ushimado.or.jp/kuroshiomaru/
オーシャン・エクスペリエンス(牛窓) http://www.oceanxp.com/
ファミリーランド(大阪・アウトドアショップ) 06-6930-6380
牛窓町観光協会 info@ushimado.or.jp
Gofield.com(香川) http://www.gofield.com
  (敬称略、順不同)


● データ

参加費用 2,000円  (2日の夜食、3日の朝食代及びキャンプ場使用料)
レンタル艇 5,000円  (2日間。パドル、PFD、スプレースカート等込み)
保険 700円  (任意)
怪我 軽傷1名  (ビーチで転んで掌に軽い打撲)
   (昼食や酒、飲物類は各自持ち込み)













 後記。

 この文章は主催者スタッフ側の視点からの「裏話」だが、アウトドアライター内田一成氏のサイトOutdoor Basic Technicには、イヴェント参加者の視点からのレポートが掲載されているので、あわせてご覧頂くとなお一層楽しんでいただけることうけあいだ。

 さて、「今年も6月の牛窓でおあいしましょう!」「今年こそ絶対行くぞ!」との声が、すでにネット上で飛び交っているようだ。 主催した側にとっては本当にありがたく、うれしいことなのだが、申しあげにくいことを正直に告白すれば、本文中ではあのように書いたにも関わらず、昨年の『第0回』と同じ形で2002年6月に牛窓で開催できるかどうかは、現在の時点では不明。 実は私の妻Ryokoが妊娠しており、出産予定が5月中旬なのである。 もちろんこちらNZで出産するつもりなので、帰国時期がまだ読めないのだ。
 また、会場に関しても、今回は牛窓以外の場所に移すというプランもある。
 いざとなったら私抜きで開催するというオプションもG-Outfitterの方では考えているので、「今年はやらない!」ということはないはずなのだが、とりあえず現在のところは『時期、開催場所ともに未定』と申しあげておくしかない状況。 あらかじめご了承をお願い申しあげます m(__)m

 本音をいえば、それこそ今年はゴールデン・ウィークにからめて、もっと派手にやりたいな、などとも考えていたので、一身上の都合でそれがかなわなくなってしまって、大変残念であるとともに、申しわけない気分でいっぱいなのだが・・・。
 でも、私自身も今年のイヴェントを楽しみにしているので、なんとか皆さんにお会いできるよう最後まで努力することはお約束する。
 というわけで、今年も瀬戸内でお会いしましょう!






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