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その2 靴







 前章『アウトドア・ギア三種の神器』を勝手に制定してしまった。 ザック雨具の3つだ。 で、前章ではザックをトピックにしたわけだ。 今回は2番目の神器、だ。

● 購入時の基本

● 購入時の盲点

● 手入れの盲点

● 濡れてしまったら






● 購入時の基本

 ザックと同様、靴選びの最大にして絶対優先すべき基準はフィット感である。 いや、ザック以上にフィット感は大切だ。 ザックの場合、ある程度ブランドネームも当てにすることが出来る。 しかし、靴の場合はブランドネームは当てに出来ない。 品質という意味ではブランドネームも参考になるのは確かだが、品質だけで飛びついてはいけない。 もちろん粗悪品では困るが、フィット感のいい靴がある程度の品質を備えている場合は、もしそれがよく知らないブランドでも迷わず買いだ。 ちゃんとしたアウトドアショップに粗悪な靴がおいてあることはないだろうから、あなたが聞いたことのないブランドでも心配する必要はないと思う。 あくまでもブランドネームよりもフィット感優先だ。

 背中の形以上に足の形は千差万別、しかも背中と違って足はフィット感に敏感な部分だし、『歩行』という作業を一手に引きうける部分でもあるからだ。 フィット感が悪いとすぐにマメが出来る。 ザックの場合はある程度フィット感が悪くても、まぁ直接命にかかわることは少ない。 しかし、靴の場合は直接命に関わる可能性が大きくなる。 フィット感の悪い靴は遭難の元である。

 というわけで、購入時に考えるのは『1にフィット感、2にフィット感、3、4がなくて5にフィット感』である。 色・デザインは無視。 『新開発エアソール』なんていう広告文句も無視。 どちらもフィット感の悪さを補ってはくれない。 エアソールではマメの防止は出来ないのだ。 女性は色・デザインに、男性は新機能に目を奪われやすい傾向がある。 気をつけよう。

 もちろん、目的に応じた機能を持った靴をリストアップしてある程度候補を絞り込んでおくことは大切。 いくらフィット感が良かったからといって高尾山を歩くために重登山靴を買うなんてのは愚の骨頂だ。

 さて、どんなマニュアルを見ても必ず書いてあることだが、フィット感は大切なので購入時の基本的な注意事項を書いておこう。

  • 購入は夕方

  • 実際に使用する厚手のソックス持参

  • 1度履いたら最低5分は歩き回る

  • 出来たら店内に試履時用の斜面を設けてあるお店を選ぶ

 最初の3つは別にアウトドア・シューズに限らず、あらゆる靴の購入の基本だ。 4つ目のポイントだが、このような試履時用に斜面を設けてあるお店は最近はよく見かける。 上り坂、下り坂でのフィット感が確認が出来るので、出来ればこういうお店を利用するのがいい。 一概には言えないが、こういうお店だったらたぶんフィッティングに一家言持っている店員さんがいるはずだ。 あと、これも一概には言えないのだが、概して新しい『アウトドア・ショップ』よりも、古い『登山用品屋』の方がフィッティングにうるさいオヤジさんがいたりするものだ。

 あと1つ、皮革アッパーの靴は履いていくうちに若干伸びるという事も覚えておこう。 これもちゃんとした店員さんだったらアドバイスしてくれるはずだが。

 ちなみにここでもザックのところで申し上げた身も蓋もないことをもう1度申し上げておかなくてはならない。 ザックと同じく、靴の場合も初めて買う時にはフィット感の良し悪しはよくわからないかもしれないので、最初の1足目は授業料と思って覚悟しておかれるのが賢明かもしれない・・・。


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● 購入時の盲点

 さて、前項では購入時の基本注意事項を述べた。 本項ではタイトルにある通り、あまりマニュアルに書かれていない注意事項、見落としやすい点などについて書いておこう。

 まず1つ目のポイント。 気に入った靴が見つかったら、同じ靴の在庫をすべて持ってきてもらって、すべて履いてみること。 マスプロ製品といえども少しずつ違うもの。 足はスゴク微妙で敏感な所なので、履き比べてみれば同じ靴でも絶対フィット感の違いを感じるはず。 だから、すべて試してみること。 そして、左右それぞれ一番気に入ったもの同士を組み合わせて買う事。 元々同じモノだから、ペアを取り替えて購入するのをいやがるお店もないはず。 嫌がるお店だったら買わなくていい。 さっさと別のお店に行くこと。 もうお気に入りの銘柄は決まってるんだから話は簡単だ。 そういう意味で、在庫をたくさん持っている大きなお店のほうがベストチョイスが得られやすい。 あと、短時間で買おうと思わない事。 とにかく靴選びはじっくり腰を据えて。

 次のポイント。 ソールの張り替えが出来るかどうかの確認を忘れないこと。 糸でアッパーとソールを縫いつけてある伝統的工法のモデルだったらなんの問題もない。 ソールの張り替えは可能だ。 ところが最近の軽登山靴、トレッキング・シューズ(ブーツ)の類はアッパーとソールをセメント(接着剤)で張り付けてあるものが多く、こういうモデルは一見しただけではソールの張り替えが出来るかどうかは見分けがつかない。 まったく同じようなソール及び工法に見えても片や張り替え可能、片や張り替え不可能ってことがあるのだ。 残念なことだが概して安いものは張り替え不可能だったりする。 そして驚くべきことに、一昔前まで超高級品だったゴアテックス・ブーティ内蔵モデルでさえ、最近ではソール張り替え不可能な履き捨てモデルが存在するようなのだ。 まったく罰当たりなご時世だ。 ビーチサンダルじゃあるまいし、トレッキング・シューズをソール1枚で履き捨てるなんてとんでもない話だ。 必ず張替え可能かどうか確認しよう。

 3つ目の盲点は防水性だ。 次項でも解説するが、『完全防水加工済み皮革アッパー+ゴアテックス・ブーティ内蔵モデル』といえども防水性は永久的なものじゃない。 意外に思われるかもしれないが事実だ。 どんな靴でも使っていくうちに必ず浸水するようになる。 これは宿命だ。 だから、他の機能はともかく、防水性にはあまりこだわり過ぎないことだ。 防水性を優先してフィット感を犠牲にするなんて論外。 しかし現実には「とにかくゴアテックス・ブーティ内蔵モデルがいい!」などと、防水性最優先で靴選びをされる方が多いようだ。
 もう1度言う。 早かれ遅かれどんな靴でも浸水するようになるのだ。 アウトドアに出て絶対に濡れないなんてことはありえない。 靴を選ぶ際もこれはあらかじめある程度覚悟しておいた方がいい。 その方が選択肢が広がり、ベストチョイスの可能性が高まる。 ちなみに防水性のない靴を使用する場合、ゴアテックスなどの防水透湿素材製のソックスやオーバーソックスを使うという手もある。 こちらの方が安いし、手入れも簡単だ。 私自身、バイクに乗っていた頃はゴアテックス製オーバーソックス(ソックスカバー)を愛用していた。 ソックスの上に履きその上からブーツを履くというシロモノだったが、非常に使いごごちがよかった。 そういう便利なシロモノもあるのだから、靴自体の防水性にはこだわり過ぎないほうが賢明だ。

 もう1つ盲点がある。 これも次の項とも関連するのだが、購入時に必ず手入れ方法をよく訊いておくことをお忘れなく。 アウトドア・シューズの場合はタウンシューズとは手入れ方法が異なることが多い。 一口にアウトドア・シューズといっても使われている素材は千差万別、つまり靴によっても手入れ方法は色々違うのである。 加えて最近はスポーツシューズ・ブランドがアウトドア・シューズの世界に進出して来ているので、変化の甚だしいことこの上ない。 特に新素材は日進月歩、前の靴のノウハウは次に買い換えた靴には通用しないかもしれない。 「靴の手入れ方法くらい知ってる」などと思わず、必ずその靴の手入れ方法は訊いておくこと。


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● 手入れの盲点

 前述の通り、基本的な手入れ方法は購入時にお店で訊けば教えてくれる。 ナイロンアッパーモデルと皮革アッパーモデルでは違いがあるし、皮革と一口に言ってもスムーズ・レザー、裏出し革、起毛革などバラエティに富んでおり手入れ方法もそれぞれ違うので、やっぱりお店でよく訊こう。 ここでは別の盲点を1つだけ取り上げたい。

 最近ゴアテックス・ブーティを始めとする防水透湿素材を内蔵した靴の値段がお手ごろになって来た。 一昔前まではホントに高嶺の花だったのだが、ナイロン・アッパーモデルの中には今や\20,000を切るものがゴロゴロあるんだから驚きだ。 前項でこういうモデルにはソールの張り替えがきかないものがあることは申し上げた通り。 ここではこの手の靴の『手入れ上の盲点』だ。

 まず最初によく覚えておいて頂きたいのは、ゴアテックスといえども防水性は永久ではないと言うこと。 詳しい解説は控えるが、防水透湿素材というのはメンブレンと呼ばれる超極薄フィルムがその正体だ。 メンブレンを使用しない防水透湿素材もあるが、靴に使用されるのは基本的にメンブレンタイプのものだ。 そんなに丈夫なシロモノではない。 使っているうちに必ず劣化して破れる。 だから遅かれ早かれ浸水が始まる。 これは覚悟しておかなくてはいけない。 だが、手入れ次第でメンブレンの寿命を伸ばすことは出来る。 逆に言えば手入れを怠ればメンブレンの寿命を縮めることも出来るというわけだ。

 実はこのメンブレン、汚れに極めて弱い。 新品で破れる心配がない状態でも、埃が付着するだけでガクッと性能が落ちるのだ。 そして劣化も早まる。 逆に洗って汚れを落とせばそれだけで性能は回復する(もちろん劣化は回復出来ないが)。 これは雨具などの場合でも全く同じだ。

 靴を考える場合、皮革アッパーモデルの場合は内部のゴアテックス・メンブレンにまで汚れが到達することは少ないが、ナイロンアッパーモデルの場合は泥、埃はそれこそジャンジャン入り放題だ。 そこで、防水透湿素材使用のナイロン・アッパーモデルの場合はとにかく使ったら必ず洗う必要があるのだ。

 手入れの盲点などと大層なタイトルの割に簡単なことではある。 でも案外実行出来てないし、その重要性もあまり認識されていないのでは無いだろうか? 「タウン・シューズはキレイに履いてもアウトドア・シューズは汚れているくらいがかえってハクがついてカッコイイ」 ってなもんで汚れ放題のブーツを履いてる方を時折見かける。 泥をつけたままでいると皮革アッパーの場合は確実に皮革自体が脂を失って劣化するし、ナイロン・アッパーの場合は内部の防水透湿素材が劣化して防水性を失う。 アウトドア・シューズのメインテナンスはキレイ、汚いの見た目、ファッションの問題ではないのだ。 あくまでも機能維持のためである。 ちゃんと洗おう。


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● 濡れてしまったら

 中までビショビショに濡れてしまった靴は厄介だ。 濡れた靴は気持ち悪いだけではなく、非常にマメが出来やすくもなるし、体温も奪われるので危険が増加する。 前述のゴアテックス・ソックスの類があれば何の問題もないのだが、そう都合よく持っていらっしゃる方ばかりではないだろう。

 ソックスの上にビニール袋を被せ、その上に靴を履くという方がいらっしゃる。 これは靴の中で足がつるつる滑って不安定になり、危険極まりない。 街中ではいざ知らず、アウトドアでは絶対にお薦め出来ない。 じゃぁ先にビニール袋を素足に被せ、その上にソックスを履いて靴を履けばいいのか? 多少安定はよくなるかもしれないが、これは実験してみれば分かるとおり何の解決にもならない。 ビニールの中はすぐに蒸れて濡れるし、薄いビニール袋を通して濡れたソックスが肌に触れるので体温も奪われる。 多少マメの危険性が減るかもしれない、という程度だろう。 こういう場合はビニール袋ではなく、スタッフバッグを利用するほうが随分ましだ。 最近はスタッフバッグにも防水透湿素材を利用したものが出まわっている。 ただのナイロン製のモノより若干高いのだが、こういうものを持っていればゴアテックス・ソックス・カバーの代用品になる。 やはり多少滑りはするものの、ただのビニール袋とは雲泥の差だ。

 もう1つ、いつでもどこでも使える技ではないが、強制的に乾かしてしまうという手がある。 あらかじめお断りしておくが、この方法は私自身はまだ試したことがない。 あくまでも伝聞だ。 なかなか大変な方法で実行は容易ではないだろうが、いざという時のために知っておいても損ではない方法だと思われるのでご紹介しておこう。

ビーダマ程度の小石を集めてフライパンで煎って熱する。 ただし中に水が浸透している石は破裂の危険があるので要注意。 この焼け石をあらかじめ余分な水分を拭き取っておいた靴内部に投入し、1箇所が焦げつかないように振り回す。 石が冷めたらまた熱する。

 これを乾くまで繰り返すわけだ。 気の長い作業だし、靴自体も少なからず痛むだろう。 またストーブを使用する場合は燃料の心配もある。 小石を焚き火の中で直接熱するという手もあるが、靴の中が煤だらけになるだろうからあまりお薦め出来ないし。 焚き火で焼け石を作る場合、実は石が真っ赤になるほど熱すれば煤は剥がれ落ちてしまうのだそうだが、逆にそんなに焼いた石を靴の中に放り込むのもどうかと思う。 今度は煤ではなく、焦げで真っ黒になりそうだ。 やはりフライパンの中で乾煎りするのがいいだろう。 ただしアルミ製のコッフェルの場合は乾煎りすると穴が空く危険があるので要注意。 というわけでやはり考えれば考えるほど厄介そうな方法だ・・・。 実際に試された経験をお持ちの方は、ご一報頂けるとありがたい。

 ちなみに濡れたソックスはシュラフの中、あるいはシュラフとゴアテックス製シュラフカバーの間に入れて寝れば朝には乾いている。 たぶん靴にも応用できるのだろうが、さすがにこれを試す勇気は今のところない・・・(^_^;


● 追記 (2000年 6月 2日)

 このたび、上記でご紹介した焼け石を利用して濡れた靴を乾かす方法を試す機会に恵まれた(?)。 結論からいえば、焼け石を使う方法は非常に有効だ。 厳密には上記のやり方とは少々違うやり方をとったので、今回の方法をご説明しよう。

 石を焼くのに利用したのはフライパンではなく、掘り出し物その1でご紹介しているサーメット。 このサーメットの焚き火台の回りにタマゴ大の石を並べ、なんとかギリギリ素手で持てる程度の熱さになった所でドンドン靴に詰め込み放置するだけという簡単な方法だ。 なんせ手で持てる温度だから靴の中が焦げる心配もないし、ある程度の大きさがあるので小石ほど簡単には冷めない。 というわけで、私はこのまま1晩放っておいたのだが、朝には十分履ける程度には乾いていた。 これだったら上記の方法と違って靴が痛む事もほとんどないだろうし、フライパンを振りまわして小石を暖める手間もない。 何度もやったわけではなく、暖めた石を放り込んだのは1回こっきり。 そのまま朝まで放置しただけだから、非常に手軽だった。

 というわけで、工夫次第で焼け石乾燥法は結構手軽に利用出来そうだということがわかった。


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